)” の例文
未だ浮世うきよれぬ御身なれば、思ひ煩らひ給ふもことわりなれども、六十路むそぢに近き此の老婆、いかでためしき事を申すべき、聞分け給ひしかや
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
上野うへの戦争後せんそうご徳川様とくがはさま瓦解ぐわかい相成あひなりましたので、士族しぞくさんがたみな夫々それ/″\御商売ごしやうばいをお始めなすつたが、おれなさらぬからうまくはまゐりませぬ。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それこそ耳にたこのできるほど聞きれたものだったが、どうもそれが『ご亭主ていしゅはたっしゃでいるよ。相変あいかわらずかせいでいるよ』
「ええ、それははじめのうちはずいぶんかえりとうございましたが、いまでは人間にんげんらしにれて、この世界せかいきになりました。」
白い鳥 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
自分も一足おくれて、小僧と赤毛布あかげっとの尻を追っけて出た。みんな大急ぎに急ぐ。こう云う道中にはれ切ったものばかりと見える。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よろめくように立上たちあがったおせんは、まど障子しょうじをかけた。と、その刹那せつなひくいしかもれないこえが、まどしたからあがった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ゆっくりした田舎の時間じかん空間くうかんの中に住みれては、東京好しといえど、久恋きゅうれん住家すみかでは無い。だから皆帰りには欣々として帰って来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
金持かねもちは、とりうちれると、つねにかごからそとはなしておきました。よるになるととりは、うちかえってきてかごのなかはいりました。
金持ちと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はちきたないものではりません。もしお前達まへたち木曾きそでいふ『はち』をれて、あたゝかい御飯ごはんうへにのせてべるときあぢおぼえたら
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
されどこは汝のことばによりてわれらの知識の増さん爲ならず、汝がかわきを告ぐるにれ、人をして汝に飮ますをえしめん爲なり。 一〇—一二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「外から入る時は、手を突つ込んでかんぬきを外すだけですから、わけはありませんが、れないと呼吸がわからないから、ちよいと面倒ですよ」
景色けしきおほきいが變化へんくわとぼしいからはじめてのひとならかく自分じぶんすで幾度いくたび此海このうみこの棧道さんだうれてるからしひながめたくもない。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そこに燃えてゐる火と蝋燭との二重の光は、私の眼が、二時間もらされて來た暗闇くらやみに對象して、いきなり私をまぶしがらせた。
が、おかげでこの近頃ちかごろはすっかりこちらの世界せかい生活せいかつれ、よくわし指図さしずをきいてくれるのでたいへんにたすかってります。
曲馬団でれているならちょうどいい、いろんな動物へ、えさをやることでも手伝っているがいい。さぁ、こっちへお入り。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
殊に、そんな楽しい時代には、地上の子供達も、屈託くったくというものにまるでれていなかったので、それをどうしていいか分らなかったのです。
それはちょうど、彼女が南京玉なんきんだまへ糸を通すように、これこそれっこになっていて、いまかつて見当をはずしたことはないのだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
いまぢあ、すこしれやしたがね、此處こゝへはじめて南洋なんやうからたときあ、まだ殘暑ざんしよころだつたがそれでも、毎日々々まいにち/\/\、ぶるぶるふるえてゐましただよ
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
尤も、この疑問は、これまでにもたびたび彼の心に浮かんでいたことなので、少しれっこになっていたせいか、さほどに気にはかからなかった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
その後多年経て隣国また来り侵す。すなわち馬どもを使うて戦わしむるに、馬は久しく磨挽きばかりにれいたので、めぐり舞い行きあえて前進せず。
笠原は始め下宿から其処そこへ通った。夜おそく、れない気苦労のる仕事ゆえ、疲れて不機嫌な顔をして帰ってきた。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
れないものはおそれるために、小火ぼやうちにこれをおさけることが出來できずして大事だいじいたらしめることがおほい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そうして、はねをひろげて、空にびあがりました。けれども、飛ぶのにはれていないものですから、バタッと地面の上に落っこちてしまいました。
段々、暗にれて来るに従って、ウッスリ相手の姿が見える。男の服装は半天はんてん股引ももひき、顔は黒布で包んでいる。子供は可愛らしい洋服姿が、たしかに茂だ。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
が、おずおずして見えたのは、濡れた着物と、大所の武家やしきにれない幸吉の態度だけで、幸吉の心もちは、ちっともおずおずしてはいなかった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あいちやんはれを左程さほどおどろきませんでした、種々いろ/\不思議ふしぎ出來事できごとには全然すつかりれてしまつて。それがところますと、突然とつぜんれがあらはれました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
駄目だよ、男の方は全下車客の八十パーセントも占めているんだから、れない君には無理だと思うんだがネ。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし、気力を失わせるような環境、幻滅にれてしまうこと、またそれぞれの瞬間の気づかない影響力、そうしたことのもつ大きな力を彼は恐れていた。
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
れてゐるばかりでなく、わりによくうつ寫眞器しやしんきで、一ダースが一ダース、めつたに失敗しつはいもないといふやうなことが、ふまでの心のおもひ出と相つて
以上は主として感情から来た鼻の表現のうちで昔から言いらわして来た言葉を拾い出したものでありますが
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
最後さいご我國わがくに世界戰爭後せかいせんさうご經濟界けいざいかい状況じやうきやうるに政府せいふ財政計畫ざいせいけいくわく巨額きよがく借入金かりいれきんをして出來できる、國民こくみん状態じやうたい戰時中せんじちう收入しうにふおほかつたことにれて
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
子供の時かられた職業であるからいまさら転職するのも好まぬし、よしまた金がらぬというてわが輩がしたならば、実際のところ社長にあたる人がない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
実際この寂しい川筋の景色も、幾多の冒険にれた素戔嗚には、まるで高天原たかまがはら八衢やちまたのように、今では寸分すんぶん刺戟しげきさえない、平凡な往来に過ぎないのであった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それは一方ひとかたならぬ大騒で、世話人らしい印半纏しるしばんてんを着た五十格好かつかう中老漢ちゆうおやぢが頻りにそれを指図して居るにもかゝはらず、一同はまだ好く喞筒のつかひ方にれぬと覚しく
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
らされぬ境界に置かれたかれはその激しい渦動のなかで、時としては目がくらまされるのである。
イワン、デミトリチははじめのうち院長ゐんちやう野心やしんでもるのではいかとうたがつて、かれ左右とかくとほざかつて、不愛想ぶあいさうにしてゐたが、段々だん/\れて、つひにはまつた素振そぶりへたのでつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
右一行中小西技師は躰量たいりやう二十三貫の大躯たいくなれ共つねに県下巡回じゆんくわいめ山野の跋渉ばつせうれ、余のごときはと山間のさんにしてくわふるに博物採集はくぶつさいしうめ深山幽谷を跋渉はつせうするの経験けいけん
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
上野と浅草と芝との鐘の中で、増上寺の鐘を一番心に沁みる音だと思ったり、自分の寺の鐘を撞きながら、鳴り始めてから鳴り終るまでの微細な音の変化にも耳を傾けれていた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
が、旅にれた人は、その虚勢を知っておのずからそれに処するの道があるのであります。
江戸定府えどじょうふとて古来江戸の中津なかつ藩邸はんてい住居じゅうきょする藩士も中津に移住し、かつこの時には天下多事にして、藩地の士族もしきりに都会の地に往来してその風俗にれ、その物品をたずさえて帰り
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かくて國民こくみんは一時的じてきのバラツクにまひれて、一時的じてき主義しゆぎ思想しさう養成やうせいされた。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
しかしそれにもれてくると、今度はかえってそれもなくてはならぬもののように平気になってしまった。先生の立てられた渋い茶を味わって、こうして我々は現代に生きていたのである。
左千夫先生への追憶 (新字新仮名) / 石原純(著)
れて居ても危險は矢張危險ぢやないですか。危險! 若しかするとうしてる所へ石が飛んで來るかも知れません、石が。』と四邊を見𢌞したが、一町程先方むかうから提燈が一つ來るので
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
太祖おおいに喜び、これより後しばしば諸将をひきいて出征せしむるに、毎次功ありて、威名おおいふるう。王既に兵を知りたたかいる。加うるに道衍どうえんありて、機密に参し、張玉ちょうぎょく朱能しゅのう丘福きゅうふくありて爪牙そうがる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
用いられずば器はその意味を失い、また美をも失う。その美は愛用する者への感謝のしるしである。「手づれ」とか、「使いこみ」とか、「れ」とか、これが如何に器を美しくしたであろう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
鮓は、それの醗酵はっこうするまで、静かに冷却して、暗所にらさねばならないのである。寂寞たる夏の白昼まひる。万象の死んでる沈黙しじまの中で、暗い台所の一隅に、こうした鮓がならされているのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
ご郷里において、竹中家のご薫陶くんとうを得ればあれにも何よりよい修業です。しかし、かかる世のらい、松千代の身命については、どうか少しもおかばいなく、唯々ただただ、ご主命のままの者と思召し下さい。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
以上いじようのほか北海道ほつかいどうにはおほかみがすこのこつてゐます。内地ないちでいふおほかみはやまいぬのことです。また内地ないちやまにゐるやまねこは家猫いへねこげて、いつのまにかやま生活せいかつれてしまつたものなのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
なくの耳にれたるか
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
れし色音いろねきとれつ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)