何處いづこ)” の例文
新字:何処
おのづから智慧ちゑちからそなはつて、おもてに、隱形おんぎやう陰體いんたい魔法まはふ使つかつて、人目ひとめにかくれしのびつゝ、何處いづこへかとほつてくかともおもはれた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
有爲轉變うゐてんぺんの世の中に、只〻最後のいさぎよきこそ肝要なるに、天にそむき人に離れ、いづれのがれぬをはりをば、何處いづこまでしまるゝ一門の人々ぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
やうやあさはなれてそら居据ゐすわつた。すべてのものあかるいひかりへた。しかしながら周圍しうゐ何處いづこにも活々いき/\したみどりえてうつらなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何處いづこにありや。我は直にかくへり、是においてか彼。汝の願ひを滿さんためベアトリーチェ我をしてわが座を離れしむ 六四—六六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
何處いづこを見ても若葉の緑は洪水のやうに漲り溢れて日の光に照される緑の色の強さは閉めた座敷の障子にまで反映するほどである。
花より雨に (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
その翌朝よくてう日出雄少年ひでをせうねんわたくしとが目醒めざめたのは八すぎ櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさは、武村兵曹たけむらへいそうをはじめ一隊いつたい水兵すいへい引卒ひきつれて、何處いづこへか出去いでさつたあとであつた。
ながらぢやうさまは何處いづこへぞお姿すがたえぬやうなりと人騷ひとさわがせするもあり乳母うばろく/\あはさずおたかかたへ寢床ねどこなら浮世うきよ雜談ざふだん諷諫ふうかん
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何處いづこより起りしか蓬々たり、勃々たる雲、寸刻にして男女兩山の半腹を蔽ひ隱し、更に擴がりて松立、大立、鳴蟲の諸山に幕の如く蔽ひ懸らんとせり。
日光山の奥 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
叩けばゆるやかに出來いできたさかなはといきまけばまだきゝに行た者が歸りませんと落付たり露伴こらへず何處いづこまで聞にやりしぞ一時間も掛るにまだ戻らぬかとことば
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ながれの女は朝鮮に流れ渡つて後、更に何處いづこはてに漂泊して其果敢はかない生涯を送つて居るやら、それとも既に此世を辭してむしろ靜肅なる死の國におもむいたことやら
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
もま不幸ふかうの上に大不幸だいふかう異見いけんらしくも言散しサア何處いづこへなり勝手に行とおもての方へ突出つきいだ泣倒なきたふれたる千太郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何處いづことも分らず、谷の末は元より意識にあるばかりで、私達の歩いてゐる處は、水の音によつてうかゞひ、立木のたけを見、いこひの息の冷えてゆくさまによつて知るの他はない。
黒岩山を探る (旧字旧仮名) / 沼井鉄太郎(著)
英米えいべいせうすれば、靡然ひぜんとして英米えいべいはしり、獨國どくこく勢力せいりよくれば翕然きうぜんとして獨國どくこくき、佛國ふつこく優位いうゐむれば、倉皇さうこうとしてふつしたがふならば、わが獨立どくりつ體面たいめん何處いづこにありや。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
又之等巨大な岩石を何處いづこよりか(此の島に斯ういふ石は無い)海上遠く持ち運ぶなどといふ技術は、彼等よりも遙かに比較を絶して高級な文明を有つ人種でなければ不可能だからである。
また何處いづこにかほかる事能はずして苦む目付めつきあり、げにあはれむに堪へたるかな。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
しかし何處いづこにか胸にはらむ恢復の希望……
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
何處いづこへか吹きわたりにける風ぞ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
人目を忍びて何處いづこに行かん
暮春詠嘆調 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
何處いづこにおちいるや何ぞいくさを避くるやとよべるもおちいりて止まるひまなく、遂に萬民をとらふるミノスにいたれり 三四—三六
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
聲なき此れ等の書物によつて世界の新思想は、丁度牢獄の中に何處いづこからとも知れず、きたる日光のやうに、若い吾々の頭に沁込んで來るのだ。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
行先ゆくさき何處いづこちゝなみだは一さわぎにゆめとやならん、つまじきは放蕩息子のらむすこつまじきは放蕩のら仕立したつ繼母まゝはゝぞかし。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何處いづこにも土地とちめづらしき話一つはある物ぞ、いづれ名にしはば、哀れも一入ひとしほ深草の里と覺ゆるに、話して聞かせずや
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
實際じつさいかれ驛員えきゐんごゑに、停車場ステイシヨンいて心得こゝろえたので。そらやまも、あまりの色彩いろどりに、われはたして何處いづこにありや、とみづかうたがつてたづねたのであつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
立ち出づ宿しゆくの朝景色何處いづこも勇ましく甲斐々々しく清々すが/\しきものなるが分きて此宿このしゆくは馬で心よく搖られ行く爲か面白し宿しゆくを離るれば諏訪の湖水朝霧立こめて空も雨を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
おどろかし何處いづこへ行やと思ひしに思ひ掛なき大藤の家へと擔入かきいれたりければ偖は娘のお光さんが何處どこぞへよめに行事かアノ結納の容子では先は大家の思はるゝが成程なるほど彼兒あのこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
カンテラのひかりもみ木陰こかげ何處いづこからでも明瞭はつきり勘次かんじ容子ようすたせるやうにぼう/\と油煙ゆえんてながら、周圍しうゐまなこ首肯うなづうてあかしたをべろべろときつゝゆらめいた
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あゝ、大佐たいさ其後そのご何處いづこ如何どうしてるだらうとかんがへるとまた種々さま/″\想像さうざういてる。
何處いづこにかが古頭巾忘れ來し物足らぬなれの頭の
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
何處いづこをさして行くとも知れない燕の群れよ
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
何處いづこより風は落つ、身もをののかれ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
わが列祖の事につきては汝これを聞きて足れりとすべし、彼等の誰なりしやまた何處いづこよりこゝに來りしやはむしろ言はざるをむべとす 四三—四五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
自國に於てすら道を行はしめる事が出來ないなら、同じ人間の住む何處いづこに道を行はしめる國があらう。冷靜殘酷な條理を以て論ずべき問題ではない。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
よろしう御座ござんすたしかに受合うけあひました、むづかしくはお給金きうきん前借まへがりにしてなりねがひましよ、家内うちとはちがひて何處いづこにも金錢きんせんらちきにくけれど
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
萬事ばんじはうあひまかせる、此女このもの何處いづこにてもともなき、妙齡としごろれんまで、人目ひとめにかけずかくけ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
世のはて何處いづことも知らざれば、き人のしるしにも萬代よろづよかけし小松殿内府の墳墓ふんぼ、見上ぐるばかりの石の面に彫り刻みたる淨蓮大禪門の五字、金泥きんでいいろあらひし如く猶ほあざやかなり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
揉事もむことに非ず早々何處いづこへか行きて居れとしかり付いざお光殿是へ御座れとおくの一間へ喚込よびこめば女房は彌々いよ/\つのはゆべき景色けしきにて密男まをとこは七兩二分密女まをんなに相場はないつぶやきながら格子戸かうしど
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おそる/\搖籃ゆれかごから半身はんしんあらはして下界げかいると、いま何處いづこそら吹流ふきながされたものやら、西にしひがし方角ほうがくさへわからぬほどだが、矢張やはり渺々べう/\たる大海原おほうなばら天空てんくう飛揚ひやうしてるのであつた。
殿はほほゑみ、『何處いづこぞ』と。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
さればまづ、いへ、汝の魂何處いづこをめざすや、かつまた信ぜよ、汝の視力は亂れしのみにて、滅び失せしにあらざるを 七—九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
めればふりきるそでたもとまづいましばしとびつうらみつりつく手先てさきうるさしと立蹴たちげにはたと蹴倒けたふされわつとこゑれとわがみゝりてかへるは何處いづこ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
童謠どうえうは(おう)がはじめてきたりしやゝ以前いぜんより、何處いづこよりつたへたりともらず流行りうかうせるものにして、爾來じらい父母※兄ふぼしけいだましつ、すかしつせいすれども、ぐわんとしてすこしもかざりき。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
言語文字まで自國のものより外國のものを愛すると云ふ國民は世界中何處いづこにも無かるべくと存じ候。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
何處いづこに人は徂き果つとも
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
テレンツィオ、チェチリオ、プラウト及びヴァリオの何處いづこにあるやを我に告げよ、告げよ彼等罪せらるゝや、そは何の地方に於てぞや。 —九九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
馥郁とせし香の何處いづこともなくして、胸の中すゞしく成ると共に、物に覆はれたらん樣なりし頭の初めて我れに復へりて、僅かに目を開きて身邊を見廻ぐらせば
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ときふゆ小春日こはるびかへざきにもあや何處いづこにかたる。昌黎しやうれいきつおもてにらまへてあり。韓湘かんしやう拜謝はいしやしていはく、小姪せうてつ藝當げいたうござさふらふりてしよまずまたまなばざるにてさふらふ
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
出來るかぎり遠く此の狹苦しいうちから離れて、自由自在に、さはやかな雨後の空氣を吸つて見たい。行先きを問ひたゞす女には何處いづこへとも答へられず、私は其の儘戸外そとへ出た。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
何處いづこいまししのびて』と
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
かれ物言はで逃去りぬ、此時我は怒り滿々みち/\し一のチェンタウロ、何處いづこにあるぞ、執拗かたくななる者何處にあるぞとよばはりつゝ來るを見たり 一六—一八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
うでもひゞ々を義務つとめばかりにおくりて此處こゝこゝろ何處いづこそら倘佯さまよふらん、一〻にかゝることども、女房にようぼうひとられてらぬは良人おつとはなしたゆびさゝれんも口惜くちおしく
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)