黒衣こくい)” の例文
一足ひとあしさきに、白樺をりて追いすがった咲耶子は、いましも施無畏寺の境内けいだいへ、ツウとかくれこんでいった黒衣こくいのかげをつけて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時に黒衣こくい長身の人物は、ハタと煙管きせるを取落しつ、其方そなたを見向ける頭巾ずきんうちに一双のまなこ爛々らんらんたりき。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
翌日よくじつ同志達どうしたちみんなから醵金きよきんした入院料にふゐんれうつて、彼女かのぢよ屍體したいりにた。すると、黒衣こくいばうさんたちが、彼女かのぢよ周圍しうゐいたが、K斷然だんぜんそれを拒絶きよぜつした。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
そして、黒衣こくいの人形をとりかこんで、押すな押すなのさわぎです。
怪奇四十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
黒衣こくい長袍ふち廣き帽を狙撃す。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
気転きてんよくたった小姓こしょう藤巻石弥ふじまきいしや、ふと廊下ろうかへでるとこは何者? 評定ひょうじょう袖部屋そでべやへじッとしゃがみこんでいる黒衣こくいの人間。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みると、黒衣こくい妖婆ようば。——晴季のッ先をびのくが早いか、乱杭歯らんぐいばの口を、カッと開いて、ピラピラピラピラ! と目にもとまらぬはりをふいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祈祷の首魁しゅかいも文観僧正だし、また常に、みかどの帷幄いあくに隠れて、東伐とうばつの謀議にあずかり、諸山の僧兵をして、みかどの御野望にくみさせんと、策しておる黒衣こくいの軍僧こそは、文観その人である、と
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)