鮫鞘さめざや)” の例文
古風にさしたり袋棚ふくろだなの戸二三寸明し中より脇差わきざしこじりの見ゆれば吉兵衞は立寄たちよりて見れば鮫鞘さめざやの大脇差なり手に取上とりあげさやを拂て見るに只今人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いまさら、と思われたのに、親分がののしりながら、鮫鞘さめざやを抜き払って、笑止にも切ってかかろうとしたので、ダッと草香流。
三十がらみで撥髪ばちびん頭、桜花を散らせた寛活かんかつ衣裳、鮫鞘さめざやの一腰落し差し、一つ印籠、駒下駄穿き、眉迫って鼻高く、デップリと肥えた人物である。
二人町奴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
関東じまあわせに、鮫鞘さめざや長脇差ながわきざしして、脚絆きゃはん草鞋わらじで、厳重な足ごしらえをした忠次は、すげのふき下しの笠をかぶって、先頭に立って、威勢よく歩いていた。
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
いきなり奈良茂ならもの側にあつた鮫鞘さめざや脇差わきざしひつこぬいて、ずぶりと向うの胸へつつこんだんだ。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
夜になって、四隣あたりが静まると、母は帯をめ直して、鮫鞘さめざやの短刀を帯の間へ差して、子供を細帯で背中へ背負しょって、そっとくぐりから出て行く。母はいつでも草履ぞうりを穿いていた。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうそう、それにまだ、凄く切れ味のよさそうな鮫鞘さめざや戒刀かいとうまでがありますしね。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さげ合羽かつぱの穴より鮫鞘さめざやの大脇差を顯はし水晶すゐしやう長總ながふさ珠數じゆずを首に懸し一の男來懸きかゝりしが此容子ようすを見るより物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小袖は無垢むくで袖口は細い、ゆきも長く紋は細輪、そうして襦袢は五分長のこと、下着は白糸まじりの黒八丈、中着は新形の小紋類、そうして下駄は黒塗りの足駄、大小は極上の鮫鞘さめざや
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何のそれがしという親分にちがいないつらだましい精悍せいかんな一人が、羽織の長いひもを、いかにも遊び人ふうに首へかけながら、鮫鞘さめざやの大わきざしをぶっさして、つづらをさしずしながら
鮫鞘さめざやの大脇差わきざしを帶しさらしの手拭を首に捲付まきつけ門口へ出て何も太儀たいぎ今度は此の藤八が一世一代命をまとの願ひすぢ娘を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
結城ゆうきの衣装に博多はかたの帯、鮫鞘さめざやの長脇差を差している。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)