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鮫膚
ずり落ちた
瓦は軒に這い下り、そり返った下見板の木目と木節は
鮫膚の
皺や吹出物の跡のように、油気の抜けきった白ペンキの
安白粉に汚なくまみれている。
活けて
視めうと
思ふ
花を、
苞のまゝ
室に
寝かせて
置いて、
待搆へた
償ひの
彼は
何ぢや!
聾の、
唖の、
明盲人の、
鮫膚で
腰の
立たぬ、
針線のやうな
縮毛、
人膚の
留木の
薫の
代りに
更めて
其の
印を
見せう、……
前刻も
申した、
鮫膚の
縮毛の、
醜い
汚い、
木像を、
仔細ありげに
装ふた、
心根のほどの
苦々しさに、へし
折つて
捻切つた、
女の
片腕、
今返すわ、
受取れ。