かぐは)” の例文
數日の後、我はマリアと柑子かうじの花かぐはしき出窓の前に對坐して、この可憐なる少女の清淨なる口の、その清淨なる情を語るを聞きつ。少女の語りけらく。
わかるゝとき一掬いつきくゆきつて、昌黎しやうれいあたへていはく、のもの潮州てうしう瘴霧しやうむさん、叔公をぢさん御機嫌ごきげんようと。昌黎しやうれい馬上ばじやうこれけてそでにすれば、ゆきかぐはしく立處たちどころ花片はなびらとなんぬとかや。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
昨夜花咲き亂れて赤らんでゐた小徑こみちは、今日は足跡もない雪で埋もれ、十二時間前には熱帶の樹立のやうに繁つてかぐはしかつた森は、今は冬寒い諾威ノールエーの松の森のやうに散り敷き、衰へて
少女は、いざ藥草を采りて給へと云ひて、右手めてを我にさし着けたり。われは鬼にえきせらるるものゝ如く、岸に登りて彼かぐはしき花を摘み、束ねて少女に遞與わたしつ。
烈しき日に燒かれたるカムパニアの瘠土に比ぶるときは、この園の涼しさ、かぐはしさ奈何いかにぞや。