饅頭まんぢゆう)” の例文
広い境内を掃くのを、栄蔵や金ちやんが手伝つてあげると、このお坊さんは喜んで、いつも檀家だんかから頂いた饅頭まんぢゆう落雁らくがんをくれるのであつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
饅頭まんぢゆうが唯ひとつ寂し相に入つてゐる汁で飯を食べたことなどもある。して、そこで勧められるままに、父の追善つゐぜんのために廻向ゑかうをしてもらつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「佛壇の前に饅頭まんぢゆうだの眞桑瓜まくはうりだの、やたらに積んで、線香の燃えさしがザクザクあつたところを見ると、まんざら忘れたわけぢやないでせう」
その貴重な皿がいま私の膝の上に置かれ、それに載せたおいしさうな小さな丸いお饅頭まんぢゆうを食べるやうに親切にすゝめられた。
うですあつたかいうちに」と主人しゆじんつたので、宗助そうすけはじめてこの饅頭まんぢゆうしてもないあたらしさにいた。めづらしさうに黄色きいろかはながめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「びつくりした! お饅頭まんぢゆうかと思つたら、甲虫かぶとむしだね?」
かぶと虫 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
主人しゆじんはしとも楊枝やうじともかたかないもので、無雜作むざふさ饅頭まんぢゆうつて、むしや/\はじめた。宗助そうすけひんならつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
饅頭まんぢゆうや團子ぢやあるめえし、人樣にポンポン呉れてやつてたまるものか——といやもう、大した勢ひでしたよ
そして、僕らが食べたやうな、汁の中にしよんぼりと入つた饅頭まんぢゆうを父も食べたのだらうとおもふと、何だか不思議な心持にもなるのであつた。これを「念珠集」のばつとする。(大正十五年二月記)
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
かねて用意した石見銀山の鼠捕りを饅頭まんぢゆうか何んかに入れ、親切めかしく寅藏にやり、寅藏がそれを食つて死んだのを見屆けてから、いろ/\の始末をして遺書ゐしよまでこさへたのさ