飛蒐とびかか)” の例文
と一声高く、頭がちに一しつ。驚破すわと謂わば飛蒐とびかからんず、気勢きおい激しき軍夫等を一わたりずらりと見渡し、その眼を看護員に睨返ねめかえして
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
重太郎は漸々だんだんに熱して来たらしい、又飛蒐とびかかってお葉の手をろうとするのを、母は再びさえぎった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
吃驚びっくりして振反ふりかえると、下女の松めが何時いつ戻ったのか、ともないつら罅裂えみわれそうに莞爾にこつかせて立ってやがる。私は余程よっぽど飛蒐とびかかって横面をグワンと殴曲はりまげてやろうかと思った。腹が立って腹が立って……
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
と一声高く、頭がちに一呵いっかしつ。驚破すわといはば飛蒐とびかからむず、気勢きおい激しき軍夫らを一わたりずらりと見渡し、その眼を看護員に睨返ねめかえして
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
黒雲の中から白い猪が火を噴いて飛蒐とびかかいきおいで、お藻代さんの、恍惚うっとりしたその寝顔へ、ふたも飛んで、仰向あおむけに、熱湯が、血ですか、蒼い鬼火でしょうか
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たちまち心づきて太刀を納め、おおいなる幣を押取おっとって、飛蒐とびかかる)御神おんかみはらいたまえ、浄めさせたまえ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
声立てさせじと飛蒐とびかかりて、お録の咽喉のどを絞め上げ絞め上げ、老婆が呼吸いきも絶々に手を合して拝むを見澄まし、さらば生命いのちを許さむあいだ、お藤を閉込め置く処へ、案内せよ、とさきに立たせ
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(放せ、やい、愛の手ッ首は細いッてよ、女の子が加減をして握るぜえ、このなまずめ。)といきなり取られた手を振切って、愛吉は下駄を脱いで飛蒐とびかかった、いきおいに恐れて伝六はたじたじと退さがったが
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)