雀躍じゃくやく)” の例文
雀躍じゃくやくとして京弥が供揃いの用意を整えて参りましたので、退屈男は直ちに駕籠を呉服橋の北町御番所めざして打たせることになりました。
「兎に角、三枝は僕の期待を裏切らなかった」——池内は雀躍じゃくやくした。だがそれを地上の人達に証明するにはどうしたらいいのか? 池内は考えざるを得なかった。
旅客機事件 (新字新仮名) / 大庭武年(著)
語る相手欲しい時だったので六樹園は雀躍じゃくやくせんばかりで、談はすぐ最近の文壇の傾向へ入って行った。
仇討たれ戯作 (新字新仮名) / 林不忘(著)
然るところさる承応二年六丸殿は未だ十一歳におわしながら、越中守に御成り遊ばされ、御名告なのり綱利つなとしと賜わり、上様の御覚おんおぼえ目出たき由消息有之、かげながら雀躍じゃくやく候事に候。
雀躍じゃくやくして家にとって返した紀昌は、再び窓際の虱に立向い、燕角えんかくゆみ朔蓬さくほうやがらをつがえてこれを射れば、矢は見事に虱の心の臓をつらぬいて、しかも虱を繋いだ毛さえれぬ。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そうして王氏は喜びのあまり、張氏の孫を上座に招じて、家姫かきを出したり、音楽を奏したり、盛な饗宴きょうえんを催したあげく、千金を寿じゅにしたとかいうことです。私はほとんど雀躍じゃくやくしました。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
神田氏の雀躍じゃくやく想見おもいみるべし。直に事の次第を学友同志輩に語り、いずれも皆先を争うて写取うつしとり、にわかに数本の蘭学事始を得たるそのおもむきは、すでに世に亡き人と思いし朋友の再生にうたるがごとし。
蘭学事始再版之序 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼は自己の所有から与え得る限りを与えんとする。彼からは今まであったものが失われて、見たところ貧しくはなるけれども、その為めには彼は憂えないのみか、却って欣喜きんき雀躍じゃくやくする。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
かくのごとく宇宙を観察しきたらば、人生五十年の歳月は、観天楽地の間に雀躍じゃくやく抃舞べんぶして送ることを得、貧苦も病患もともに相忘れて、いながら極楽界中の人となることを得るに相違ない。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
それほどわたくしが所長にもみんなにも働いていると思われていたのか、ありがたいありがたいと心の中で雀躍じゃくやくしました。すると所長は私の顔は少しも見ないで、やっぱり新聞を見ながら
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
もし鬼ありて僕に保証するに、なんじの妻を与えよ我これをかんせん爾の子を与えよ我これをくらわんしからば我は爾に爾の願をかなわしめんと言えば僕は雀躍じゃくやくして妻あらば妻、子あらば子を鬼に与えます
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
雀躍じゃくやくして、上流の沈床の上へ取って帰って竿へ友釣りの仕掛けをつけ、この鮎を囮にした。師匠もない、道具も揃わない、にわか仕立ての友釣りを試みる自分である。手網も、囮箱も、通い筒も持たぬ。
想い出 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
子供が大好きなお菓子を貰ったよりもまだ嬉しそうに、目の悪い若い前座は顔全体を雀躍じゃくやくさせてはしゃいでいた。この人のこの時の顔を生涯私は忘れないだろう。拍手が起こって服部君が下りて来た。
随筆 寄席風俗 (新字新仮名) / 正岡容(著)
かくのごとくに慧眼けいがん俊敏、たちまち第一のなぞがばらりと解きほぐされましたものでしたから、ふたりの配下は雀躍じゃくやくとして、大小二つのバッタのごとく、そでに風をはらみながら飛びだしました。