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隈々
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くまぐま
ふりがな文庫
“
隈々
(
くまぐま
)” の例文
輪郭の正しい目鼻立ちの
隈々
(
くまぐま
)
には、心の中からわいて出る寛大な微笑の影が、自然に漂っていて、脂肪気のない君の
容貌
(
ようぼう
)
をも暖かく見せていた。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
遊女はやや老いて人もすさめなくなると、いよいよ歌謡と酒との
昂奮
(
こうふん
)
を借りて、男女たがいの心の
隈々
(
くまぐま
)
を探りあい、求め難い安住の機会を
把
(
とら
)
えようと努める。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
俥
(
くるま
)
は
寂然
(
しん
)
とした
夏草塚
(
なつくさづか
)
の
傍
(
そば
)
に、小さく見えて待っていた。まだ葉ばかりの
菖蒲
(
あやめ
)
杜若
(
かきつばた
)
が
隈々
(
くまぐま
)
に自然と伸びて、荒れたこの広い
境内
(
けいだい
)
は、
宛然
(
さながら
)
沼の乾いたのに似ていた。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
長い春の夜もやがて明けて華やかな
朝陽
(
あさひ
)
が谿谷の国の
隅々
(
すみずみ
)
隈々
(
くまぐま
)
にまで射し入って夜鳥のしめやかな啼き声に代わって暁の鳥の勇ましい声が空と地上に
満
(
み
)
ち満ちた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
山を照し、谷を輝かして、
剰
(
あま
)
る光りは、又空に跳ね返って、残る
隈々
(
くまぐま
)
までも、鮮やかにうつし出した。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
▼ もっと見る
停車
場
(
ば
)
の時計、六時を五分過ぎ、下りの汽車を待つ客七、八人、声立てて語るものなければ
寂寥
(
さびし
)
さはひとしおなり。ランプのおぼつかなき光、
隈々
(
くまぐま
)
には届きかねつ。
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
飛行機の飛びつくす
隈々
(
くまぐま
)
に
儼然
(
げんぜん
)
とコビリ付き、冷え固まっている社交上の因襲、科学に対する迷信、外国の模倣、死んだ道徳観念……なぞいう現代社会の
所謂
(
いわゆる
)
常識なるものに飽き
果
(
はて
)
て、変化溌溂
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
岡やまつゞき
隈々
(
くまぐま
)
も
若菜集
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
かずの
隈々
(
くまぐま
)
……
故郷の花
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
広い広い纐纈城の
隅々
(
すみずみ
)
隈々
(
くまぐま
)
にまで鳴り渡るような鋭い女の叫び声が、大廊下の外れから聞こえて来た。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
光りの暈は、今は
愈々
(
いよいよ
)
明りを増して、輪と輪との境の
隈々
(
くまぐま
)
しい処までも見え出した。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
翰林詞苑
(
かんりんしえん
)
の文章は言うに及ばず、軍書から人情本までの何万種という小説は有っても、なおその中には書き伝えておかなかった平凡人の心の
隈々
(
くまぐま
)
が、
僅
(
わず
)
かにこの偶然の記録にばかり
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
日暮れて式場なるは申すまでもなく、十万の家軒ごとに、おなじ生首提灯の、しかも
丈
(
たけ
)
三尺ばかりなるを揃うて
一斉
(
いっせい
)
に
灯
(
ひとも
)
し候へば、市内の
隈々
(
くまぐま
)
塵塚
(
ちりづか
)
の片隅までも、
真蒼
(
まっさお
)
き昼とあひなり候。
凱旋祭
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「黄金の甲冑を取り戻すまでは俺達はここへは帰って来まい」——「黄金の甲冑を探しに行こう。日本の国の
隅々
(
すみずみ
)
隈々
(
くまぐま
)
を、幾年かかろうと
関
(
かま
)
わない。探して探して探して廻ろう」
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その人が原作に忠実な詩人であればある程、訳詩がちっとも、もとの姿をうつしていないことに悲観したことが察せられる。それほど日本語は、象徴詩人の欲するような
隈々
(
くまぐま
)
を持っていないのである。
詩語としての日本語
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
龕灯
(
がんどう
)
の光は益々白く、部屋の
隅々
(
すみずみ
)
隈々
(
くまぐま
)
まで、昼のように明るかった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
隈
漢検準1級
部首:⾩
12画
々
3画
“隈々”で始まる語句
隈々隅々