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闇川橋
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やみがはばし
琵琶箱負ひたる
丈高きしたゝかな
座頭一人、
人通もなき
闇川橋の
欄干を、
杖以てがたりびしりと
探る——
其の
頭上には
怪しき
雲のむら/\とかゝるのが
自然と
見える。
六十
余州往来する
魔物の
風流思ふべく、はた
是あるがために、
闇川橋のあたり、
山聳え、
花深く、
路幽に、
水疾き
風情見るが
如く、
且つ
能楽に
於ける、
前シテと
云ふ
段取にも
成る。
帰路に
闇川橋を
通りけるに、
橋姫の
宮のほとりにて、
丈高くしたゝかなる
座頭の
坊、——としてあるが、
宇都谷峠とは
雲泥の
相違、
此のしたゝかなるとばかりでも
一寸鐙は
窪ませられる。