鉦鼓しょうこ)” の例文
時刻となれば、貝が鳴り、鉦鼓しょうこがとどろき、軍楽隊の演奏とともに、梁中書は副官その他、大勢の軍兵をしたがえて、式場へ臨んだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鉦鼓しょうこ喧噪けんそうしてひたすらに幽霊の追却につとめているのは、これまた仏教の圏外けんがいのものであるらしいことは、数年前にもすでにこれを説いたが
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
少年どもに鉦鼓しょうこをうたせ、旗さしものをうちふらせて軍勢ありとみせ、すわ敵の寄せたりといえば、即座に三百の兵をその口へ向け、いずこを
日本婦道記:笄堀 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
遥なる木母寺もくぼじ鉦鼓しょうこに日は暮れ、真崎稲荷まっさきいなりの赤きほこらに降る雪の美し(下巻第六図)と見るもなく
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
諸仏開帳の例として、開帳中は数十人の僧侶が、日々参列して読経どきょう鉦鼓しょうこを勤めなければならない。
半七捕物帳:65 夜叉神堂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
張昺等を北平城の内外に分ち、甲馬は街衢がいく馳突ちとつし、鉦鼓しょうこ遠邇えんじ喧鞠けんきくし、臣が府を囲み守る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
短夜みじかよ鉦鼓しょうこにまじるけいの音
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
いんいんたる貝の音や鉦鼓しょうこが城外の諸方面に聞える。総攻撃開始の気勢きせいである。けれど織田勢はまだ城壁の下に兵影は見えなかった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たつよりひつじに至って、両軍たがいに勝ち互に負く。たちまちにして東北風おおいに起り、砂礫されきおもてを撃つ。南軍は風にさからい、北軍は風に乗ず。燕軍吶喊とっかん鉦鼓しょうこの声地をふるい、庸の軍当るあたわずしておおいに敗れ走る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
我跡わがあとからも鉦鼓しょうこ打ち来る 嵐蘭らんらん
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
計略図にあたったと見ると、蜀軍は鉦鼓しょうこを鳴らし、ときの声をあわせ、野の果て、林の陰、陣営の東西などから、いちどに奮い起ってきた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
迎えの灯と、列の灯とが合流して、目代もくだい邸のほうへ押流れた。寺でも神社でも、かがりいていた。どこかで、鈴や笛や鉦鼓しょうこなどのがくが遠く聞えていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでにその頃、暁闇ぎょうあんをへだてて、本能寺方面の空には何とも形容し難い物音が揚りはじめていた。いんいんと吹き鳴らす陣貝の音や鉦鼓しょうこのとどろきも聞えた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またたちまち一方の沢からも、鉦鼓しょうこを鳴らして、一軍が奇襲してきた。さしもの趙雲も狼狽して
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いったい城中よりの火の手をあげて、われに内応したのは何者か」と、いぶかっていると、搦手からめての山道からおよそ三百人ほどの手下を従えて、鉦鼓しょうこをうち鳴らし、旗をかかげ
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時に、玄徳の本軍も遠くから潮のような諸声や鉦鼓しょうこの音をあげて威勢を助けていた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらに、夜半の頃に及ぶや、四方の森林や民家は炎々たる焔と化し、ときの声、鼓の音は、横にも後にも、城中に湧きあがり、四面まったく敵の火の鉦鼓しょうこのとどろきになったかの思いがある。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)