金切声かなきりごえ)” の例文
旧字:金切聲
おもしろそうに唄ったりはやしたりしているうちはよかったが、しまいには取組合いの喧嘩を始めた。上さんが金切声かなきりごえしぼって制する。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
それからあの金切声かなきりごえも——そういえば、先生は、今もあの金切声を張りあげて、せわしそうに何か給仕たちへ、説明しているようではないか。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いらっしゃいましと大年増の蝶子が出迎えて「番先ばんさきはどなた。」と客の注文をきくより先に当番の女給を呼ぶ金切声かなきりごえ
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
空中をフワフワ飛んでゆく白衣びゃくいの怪人が現れたかと思うと、間近くから救いを求める老婦人の金切声かなきりごえが起りました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妻や何かに知らせて、大さわぎしたら、座敷へ上って来るだろう、どうしようかと思っていると、たちまち妻がひどい金切声かなきりごえで「どうしましょう、あんなものが!」といった。
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
稽古けいこする小娘が調子外れの金切声かなきりごえ今も昔わーワッとお辰のなき立つ事のしばしばなるに胸苦しく
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
窓ガラスがきしむ。暖炉だんろ煙突えんとつが音をたてる。姉のエルネスチイヌまでが金切声かなきりごえをしぼる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
あんな金切声かなきりごえを連発するやつが居ちゃあ肝腎の会話の邪魔になるからだろう。それからあとで、宮殿の番兵になってちょっとおじぎをしたきり、その夜のモラガスの出演はこの二つだけだった。
またはかくばあさんに連れて行かれるといって、小児を戒める親がまだ多い。村をあるいていて夏の夕方などに、ぶ女の金切声かなきりごえをよく聴くのは、夕飯以外に一つにはこの畏怖いふもあったのだ。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
金切声かなきりごえで、伊織はさけんだ。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先生の見すぼらしい服装と金切声かなきりごえをあげて饒舌しゃべっている顔つきとが、いかにも生活難それ自身の如く思われて、幾分の同情を起させたからであろう。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
婦人の金切声かなきりごえと、子供の泣き叫ぶ声とで、壕の中は、さらに息ぐるしかった。天井は、角材を格子こうしに組んであったが、非常に低かった。換気かんきもよろしくない。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「乗換ですよ。ちょいと。」本所行の老婆は首でも絞められるように、もう金切声かなきりごえになっている。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
が、あとでは毛利先生が、明るすぎて寒い電燈の光の下で、客がいないのをさいわいに、不相変あいかわらず金切声かなきりごえをふり立て、熱心な給仕たちにまだ英語を教えている。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
奇妙とも妖艶ようえんともつかない婦人の金切声かなきりごえが頭の上の方から聞えたかと思うと、ドタドタという物凄い音響がして、佐和山女史の大きな身体がさかさになってころがり落ちて来ると
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ここまで私がしゃべりつづけると、いきなり相良が金切声かなきりごえをあげて叫んだことである。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
舞台にはただ屏風びょうぶのほかに、火のともった行燈あんどうが置いてあった。そこに頬骨の高い年増としまが一人、猪首いくびの町人と酒を飲んでいた。年増は時々金切声かなきりごえに、「若旦那わかだんな」と相手の町人を呼んだ。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小町 (金切声かなきりごえを出しながら)どこへ行くのです? どこへ行くのです?
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
隊長室戸博士は、金切声かなきりごえで、助手たちの後から叫んだ。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)