逃路にげみち)” の例文
必死に、逃路にげみちを求めてゐるやうな青年の様子が、可なり悲惨だつた。美奈子は、他人事ならず、胸が張り裂けるばかりに、母が何と云ひ出すかと待つてゐた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
最後の逃路にげみちは、母親よりなかった。古風な、祇園の芸妓げいこさんのおあさんばかりではない。まだその時分には、牛肉を煮る匂いをきらった老女は多かったのだ。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
親父の位牌へ対して路銀まで下すって、そのうえ逃路にげみちまで教えて下さると云うはな実に有り難い事ではないか、なんとも申そうようはございません、コレお國、この罰当ばちあたりめえ
一呼吸ひといきいていて、唐突だしぬけに、ばり/\ばり/\、びしり、どゞん、廊下らうか雨戸外あまどそとのトタン屋根やねがすさまじく鳴響なりひゞく。ハツときて、廊下らうかた。退治たいぢではない、逃路にげみちさがしたのである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
必死に、逃路にげみちを求めているような青年の様子が、可なり悲惨ひさんだった。美奈子は、他人事ならず、胸が張り裂けるばかりに、母が何と云い出すかと待っていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
が、吃驚びつくりするやうな大景氣だいけいき川鐵かはてつはひつて、たゝきのそば小座敷こざしき陣取ぢんどると、細露地ほそろぢすみからのぞいて、臆病神おくびやうがみあらはれて、逃路にげみちさがせやさがせやと、電燈でんとうまたゝくばかり、くらゆびさしをするにはよわつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)