辛子からし)” の例文
「それはバタで。」「この点々ポチポチは何だ。」「それは辛子からしで御座います。」「青い眼玉はどうした。」俺はつくづく苦笑した
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
私は、蓮根れんこんの穴の中に辛子からしをうんとめてげた天麩羅てんぷらを一つ買った。そうして私は、母とその島を見ながら、一つの天麩羅を分けあって食べた。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
やがて熱い湯をたらいんで、湯気の濛々もうもうと立つ真中へ辛子からしを一袋けた。母と千代子は黙って宵子の着物を取りけた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今も『鰐』という諷刺雑誌が出ているかどうかわからないけれども、これも辛子からしのきいた諷刺雑誌であった。
政治と作家の現実 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
納豆はそのまま混ぜてもよいが、普通に納豆を食べる場合と同じように、醤油しょうゆ辛子からし、ねぎの薬味やくみ切を加えて、充分ねばるまでかき混ぜたものを入れるとよい。
たとえ成吉思汗ジンギスカン様が辛子からしをお舐めになった時でも、かく言うそれがしさえお傍にいれば、ああ辛いとおっしゃるかわりに、わっはっはと笑わせてお眼にかける。
女主人はレモンの汁を私の皿の手前に絞つてれ、程よく食塩と辛子からしを落して呉れた。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
酢ミソに辛子からしをつけて、わけぎを細かく切った薬味をつけて置いて行く。親骨と首、腹の大きくえぐったアラはフナコクにしてくれといえばよい。実に手ぎわよく、きれいにやってくれる。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
すぐ医者が駆けつけて熱い辛子からし湿布しっぷをしてくれたので、ようやく命だけはとりとめ、肺炎にもならずにすんだが、ひどい疲労と高熱で意識不明のまま昏々と眠りつづけ、その眠りのうちに
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
疵口なぞをいやす時には辛子からしのような刺撃性の物を食べてはいけません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
どうかして泣かせてやろうとくすぐったり辛子からしめさせるような故意の痕跡が見えいたら定めし御聴きづらいことで、ために芸術品として見たる私の講演は大いに価値を損ずるごとく
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何だか辛子からしのようにも思えるんだけれど、生憎あいにく、からしかとく事を知らない私は
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
一太も黙って納豆の藁づとと辛子からしを渡す、二人の子供に日がポカポカあたった。
一太と母 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
わざと肩肘かたひじを張るのではないかと思えるほどの横柄な所作は、また荒っぽく無雑作に見えた。教師は左の手で一つのさじを、鉢の蔬菜の上へ控えた。塩と胡椒こしょう辛子からしを入れる。酢を入れる。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そのたたいたアジを酢ミソで食べたり、あるいは辛子からしミソで食べる。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
なんとすいすいしたサラダと辛子からしだ。このハムだ、パンだ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
だから私口惜くやしくて、そんな奴の子供なんか産んじゃ大変だと思って辛子からしを茶碗一杯といて呑んだわよふふふ、どこまで逃げたって追っかけて行って、人の前でツバを引っかけてやるつもりよ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
これをワサビ醤油か、少し酢を入れた辛子からしミソで食べる。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)