きし)” の例文
きしる響せざるが故矢張初めの中は乗り心地よろしからず世の中段々いやなものが流行出したりと思いき。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ことにこの辺りは川幅もひろくかつ差し潮の力も利けば、大潮の満ち来る勢に河も膨るゝかと見ゆる折柄、潮に乗りてきしり出づる玉兎のいと大にして光り花やかなるを
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
あたりを見たる眼配まくばりは、深夜時計のきしる時、病室に患者を護りて、油断せざるに異ならざりき。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はそこから茅茨ばうじ瓦甍がばうと相連つた町を通抜けて、松並木の凉しい影を成してゐるところから、次第にさびしい、水車などのきしつてゐる、処々に草深い水の咽んで流れてゐる
伊良湖岬 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
四隣しりん氣味きみわるほど物靜ものしづかで、たゞ車輪しやりんきしおとと、をりふし寂寞じやくばくとした森林しんりんなかから、啄木鳥たくぽくてうがコト/\と、みきたゝおととが際立きわだつてきこゆるのみであつたが、鐵車てつしやすゝすゝんで
がねきしりおち
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
もとからすえく時には鱗の順ですからごくなめらかでサラ/\と抜けるけれど梢より根へ扱く時は鱗が逆ですから何と無く指にこたえる様な具合が有てうかするとブル/\ときしる様な音がします(荻)成る程そうだ順に扱けば手膺てごたえは少しも無いが逆に扱けば微かに手膺えが有る(大)サア是で追々に分ります私しは此三筋の髪の毛を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
あたりを見たる眼配まくばりは、深夜時計のきしる時、病室に患者を護りて、油断せざるにことならざりき。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
紅玉熔け爛れんとする大日輪が滄波の間からきしり出す。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)