謀叛気むほんぎ)” の例文
旧字:謀叛氣
こんな謀叛気むほんぎは、神尾も相当に持っていないではないから、二人は顔を見合わせると、あれかこれかと語り合ってみるが、落着くところは資本もとで
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
上野行、浅草行、五六台も遣過やりすごして、硝子戸越がらすどごしに西洋小間こまものをのぞく人を透かしたり、横町へ曲るものを見送ったり、しきりに謀叛気むほんぎを起していた。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして時たま謀叛気むほんぎを出しながら夫は、やはりこの妻を信じ、決して離れようなどとは夢にも思っていません。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そうでしょう、謀叛気むほんぎがなければ逃げるはずはありません。忽然こつぜんと、あの稚子ちごが、姿をかくしたのは、まだ、少年ではありますが、明らかに源家の挑戦と見られる
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしが何かちょっと謀叛気むほんぎでも起こそうものなら、すぐわなへかかってしまうわけです! またそれくらいのことはしかねない女でしたよ! 何しろ女ってやつは
出来るなら辻永が永遠にこのバー・カナリヤに現われないことをこいねがった。辻永が探偵に夢中になっている間にこの女をさそい出してどこかへ隠れてやろうかという謀叛気むほんぎも出た。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あなたなんざ、これからの身体からだだ。おとなしくさえしていりゃどんな発展でもできようってもんだから、肝心かんじんなところで山気やまぎだの謀叛気むほんぎだのって低気圧を起しちゃ親不孝に当らあね。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
生前せいぜん顔を合わすれば棒立ぼうだちに立ってよくは口もきけず、幼年学校でも士官学校でも学科はなまけ、病気ばかりして、晩年には殊に謀叛気むほんぎを見せて、恩義をわきまえたらしくもなかった篠原良平が
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
謀叛気むほんぎのかたまりなりと
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
だいそれた謀叛気むほんぎのある先生方なんだから、長くその手先になって働いてみたところが、ばかばかしいくらいのもんだ。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兄の謀叛気むほんぎを、いさめようにも間にあわず、さりとて、兄を見殺しにもできず、なおさら、兄を敵として戦えもせず、結果はこうと、兄貴の馬鹿芸を承知のうえでわれもくみしたが——。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬鹿囃子ばかばやしとかいったようなものですが、あなた方は、そんな種類の人とは思われないから、世を忍ぶ謀叛気むほんぎの方々かと、一時は疑いの心を起しました
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
謀叛気むほんぎでもあったかのように、一族どもは、平家から睨まれていたらしい。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰か謀叛気むほんぎのある大名でも後ろだてになった日には、由比の正雪の二の舞だ、というようなわけでごいしょう。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
遺憾いかんなく、自己の謀叛気むほんぎの終局を見とどけた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金にかつえている時分にこそ、金があったらひとつ昔の壮遊を試みて、紅燈緑酒のかんに思うさま耽溺たんできしてみよう、なんぞと謀叛気むほんぎも起らないではなかったが、金が出来てみると
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
吉次の謀叛気むほんぎにも組せない。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ものにするとは、何かお手のものの商売手に利用してみてやろうじゃないかという謀叛気むほんぎなのであります。このお寺の納所なっしょで、案内係であの小坊主を腐らせてしまうのは惜しい。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
単にそれは、ここやかしこに限らず、この二人は、全国的に要害の城という城には特に興味を持っており、城を見ると、何かしら謀叛気むほんぎを湧かさずにはおられないかの如く見える。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こうしておびただしい銭勘定をさせられてみたところで、急に赤い方へ転向の謀叛気むほんぎをそそのかされたと見る理由もなく、また事実上、この男は、性質は単純であるけれども、意志は鞏固きょうこですから
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)