触込ふれこ)” の例文
菊五郎の猿牽さるひき与次郎、本物の猿を使つて見すると云ふ触込ふれこみ初日前より高く、当人得意でお辞儀をさせてよろこべども
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
いやに気位を高くして、家が広いから、それにどうせ遊んでいる身体からだ、若いものを世話してやるだけのこと、もっとも性の知れぬお方は御免こうむるとの触込ふれこみ。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
熊の解剖それから又或時あるときにはう事があった。道修町どしょうまち薬種屋やくしゅやに丹波か丹後から熊が来たと云う触込ふれこみ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
鳴かずんば鳴かして見しょう、日中ひなか時鳥ほととぎすを聞くんだ、という触込ふれこみで、天王寺へ練込みましたさ、貴方。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
午前十時と云う触込ふれこみなので、十一時に寺本さんの家に往って見ると、納屋なやと上塗せぬ土蔵どぞうの間の大きな柿の木の蔭に村のしゅうがまだ五六人、紙旗を青竹あおだけいつけて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ヤアさんというのは赤阪あかさか溜池ためいけの自動車輸入商会の支配人だという触込ふれこみで、一時ひとしきりは毎日のように女給のひまな昼過ぎを目掛けて遊びに来たばかりか、折々店員四、五人をつれて晩餐ばんさん振舞ふるまう。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
生徒にむかって金二分持て来い、水引みずひきも要らなければ熨斗のしも要らない、一両もって来ればつりるぞとうように触込ふれこんでも、ソレでもちゃんと水引を掛けて持て来るものもある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
事実において人殺しもすれば放火つけびもして居る、その目的を尋ねて見ると、仮令たといこの国を焦土にしてもくまで攘夷をしなければならぬと触込ふれこみで、一切いっさい万事一挙一動ことごとく攘夷ならざるはなし。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)