見窄みすぼら)” の例文
調度も貧しく、酒の道具は裏庭に散らばつた儘、仰ぐと天井板が半分しか無く、太いはりが頭の上を通つて居るのも見窄みすぼらしい限りです。
これに対して、精鋭をうたわれた皇軍の飛行機は、三百台ばかりが飛んでいたが敵の大空軍に較べて、なんと見窄みすぼらしく見えたことであったか。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ようやくこの裸体国の中で、たった一人、浴衣に経木帽きょうぎぼうという自分の姿が、ひどく見窄みすぼらしく感じられて、肩をすぼめてその一むれのパラソルの村を抜けると
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
やつと暫くして代議士は議事堂カピトルへの通り路に見窄みすぼらしい小さな教会がある事を思ひ出して、ほつと息をついた。
また風呂敷包を両手に下げた引かけ帯の見窄みすぼらしい母親と並んで、一太は一層商売を心得た風に歩き出す。彼は活溌に左右に眼を配って、若い細君でも出て来そうな家を物色した。
一太と母 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
わたしのこの身なりの見窄みすぼらしさはどうだらう? これが私の身上ありだけのものだつて言つたなら、世の中の女達はまあどんなにわたしを憐むことだらう? 僅かばかり持つてゐたものは
散歩 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
くびむしさかさまれてひたひがいつでもあつられてあせばんでた。百姓ひやくしやうみな見窄みすぼらしいをんなかへりみなかつた。村落むらから村落むらわたときをんな姿すがた人目ひとめくべき要點えうてんが一つもそなはつてなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)