おおい)” の例文
式場用の物のおおい、敷き物、しとねなどの端を付けさせるものなどに、故院の御代みよの初めに朝鮮人がささげたあやとか、緋金錦ひごんきとかいう織物で
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
不意に陽がかげって頭の上へおおいをせられたような気がするので、なんふくっているろばから落ちないように注意しながら空を見た。
竇氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
眼にはおおいられたすべての醜い事象がよこたはつてゐます。それを踏み越えなければならないと解つてはゐますけれどもどう行つていいのか解りませんでした。
S先生に (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
続いて出でける男は、『しれ者かな』とて馬の口に取り附く処を、同じ様に斬り給えば、籠手こておおいより打ちて、打ち落されて退きにけり。その後、近附く者もなければ、云々。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
の葉も、ぱらぱらと散り浮いて、ぬらぬらと蓴菜ぬなわつるが、水筋をい廻る——空は、と見ると、おおいかかるほどの樹立はないが、峰が、三方から寄合うて、遠方おちかたは遠方なりに遮って
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
答 玉露はおおいをせし茶の総名でござる今より四十年足らず先より始まりたる茶にて其由来は去る頃大阪の竹商人某と云者折々宇治に来り濃茶薄茶を製するを見てふと心付此葉を以て煎茶に製せん事を
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
おおいとり互にまみ寒牡丹かんぼたん
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
すぐ右側に赤いポストの立っている処があって、そこから横街よこちょうの入口が見え、そのむこうかどになった処にきいろおおいを垂らした洋食屋らしい店があった。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)