西北にしきた)” の例文
ふゆはじきにれかかって、かなたのくろいすぎばやしあたまさむ西北にしきたかぜいて、うごいているのをていますと、またちらちらとゆきちてきました。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うそさぶしとひしも二日ふつか三日みつか朝來あさよりもよほす薄墨色うすずみいろ空模樣そらもやう頭痛づつうもちの天氣豫報てんきよはう相違さうゐなく西北にしきたかぜゆふぐれかけて鵞毛がもう柳絮りうじよかはやちら/\とでぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こういう人にありがちな場末生活ばすえせいかつを、藤井は市の西北にしきたにあたる高台の片隅かたすみで、この六七年続けて来たのである。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……お前も知っている通り、十五日は朝から夕方にかけて、かなり強い西北にしきたの風が吹いた。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
三階に着くより静緒は西北にしきたの窓に寄り行きて、効々かひがひしく緑色のとばりを絞り硝子戸ガラスど繰揚くりあげて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
西北にしきた寒風かんぷうに吹付けられながら歩いて行くと、何ともなく遠い行先の急がれるような心持がして、電車自転車のベルのをば駅路の鈴に見立てたくなるのも満更まんざら無理ではあるまい。
この船をすでに追ひぬきうち羽振はぶく鷹いさぎよし西北にしきたの晴
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして西北にしきたの方からは、少し風が吹いてきました。
水仙月の四日 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
自分はなぜか躊躇ちゅうちょして手を出しかねた。その時雨の音が窓の外で蕭々しょうしょうとした。昼間吹募ふきつのった西北にしきたの風は雨と共にぱったりと落ちたため世間は案外静かになっていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
村の木立は、いずれも西北にしきたの風に、葉が振い落ちて、村の中が何となくさびれて来た。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
そして西北にしきたの方からは、少し風が吹いてきました。
水仙月の四日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)