かつ)” の例文
湖山はこれより先嘉永四年の冬かつき、参河国みかわのくに吉田の城主松平伊豆守信古のぶひさの儒臣となっていたので、海防に関する意見書を藩主に呈し
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そのむこうの空のぬれた黝朱うるみの乱雲、それがやがてはかつとなり、黄となり、朱にあかに染まるであろう。日本ラインの夕焼けにだ。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
それが出来ないなら、むしろ、「かつ粗衣そい)をて玉をいだく」という生き方が好ましい。生涯しょうがい孔子の番犬に終ろうとも、いささかのくいも無い。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
サルオガセがぶら下ったり、山葡萄やまぶどうからんだり、それ自身じしん針葉樹林の小模型しょうもけいとも見らるゝ、りょくかつおう、さま/″\の蘚苔こけをふわりとまとうて居るのもある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ひと口に紅葉と云うものの、こうして眺めると、黄の色も、かつの色も、紅の色も、その種類が実に複雑である。おなじ黄色い葉のうちにも、何十種と云うさまざまな違った黄色がある。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ここにおいてか警察部長チーフコンステーブルは万一をおもんぱかり、彼に向かってせつに集会を中止せんことを求めたけれども、元来彼ロイド・ジョージは、自らかえりみてなおからずんばかつ寛博かんぱくといえどもわれおそれざらんや
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
「黒、かつ、黄、灰、白、無色。それからこれらの混合です。」
グスコーブドリの伝記 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
始テかつヲ本藩ニキ儒員ニ列ス。藩命ヲ受ケテ西遊シ諸藩ノ情勢ヲ探リ、兼テ文ヲ朗廬ろうろ阪谷さかたに先生ニ学ブ。後ニ国ニ帰リ『西藩見聞録』ヲ作ツテコレヲたてまつル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)