かゝ)” の例文
壁側に積重ねた布團には白い毛布がかゝつて、其に並んだ箪笥の上に、枕時計やら鏡臺やら、種々な手𢌞りの物が整然と列べられた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
いろ真蒼まつさをで、血走ちばしり、びたかみひたひかゝつて、冠物かぶりものなしに、埃塗ほこりまみれの薄汚うすよごれた、処々ところ/″\ボタンちぎれた背広せびろて、くつ足袋たびもない素跣足すはだしで、歩行あるくのに蹌踉々々よろ/\する。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたくし?」と云つた時、女はかほを半分程三四郎の方へけた。さうして二重瞼ふたへまぶたの切れ目から男を見た。其眼そのめにはかさかゝつてゐる様に思はれた。何時いつになく感じが生温なまぬるた。ほゝいろも少しあをい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)