被成なされ)” の例文
もとよりいやしき身にて候得者さふらへばたとひ御手討に被成なされ候とも何かは苦しかるべきに、一命をお助け被下くだされし上は、かばかりの傷は物の数にても候はず
「短慮被成なされまじきこと」——呼吸いきせき切って駈けもどった甚助の前で、その従僕の前もかまわず、彼は最後の一行にむせび泣いたのであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
なお喜左衛門の忠直ちゅうちょくなるに感じ給い、御帰城ののち新地しんち百石ひゃっこくに御召し出しの上、組外くみはずれに御差加おさしくわえに相成り、御鷹部屋おたかべや御用掛ごようがかり被成なされ給いしとぞ。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一筆ひとふで示しまいらせそろ、さても時こうがら日増しにお寒う相成りそうらえども御無事にお勤め被成なされ候や、それのみあんじくらし※、母事ははこともこの頃はめっきり年をとり
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
以手紙てがみをもつて申上候貴兄きけい彌々いよ/\安全あんぜん醫業いげふ被成なされ目出度めでたくぞんじ奉つり候然れば此方このはう八年まへ近邊きんぺんよりの出火しゆつくわにて家財道具を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひさし御目おんめもじ致さず候中さふらふうちに、別の人のやうにすべ御変おんかは被成なされ候も、わたくしにはなにとやら悲く、又ことに御顔のやつれ、御血色の悪さも一方ひとかたならず被為居候ゐらせられさふらふは、如何いかなる御疾おんわづらひに候や
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あわれ歌人よ「闇に梅匂ふ」の趣向はもはやうちどめに被成なされてはいかがや。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
奥方も御同列にて御入おんいりありしが、瑞雲院様愚老を側近くお呼び被成なされ不便ふびんなれ共それがし今宵汝が首を所望致すぞと仰せられ、既にお手討にも可被成なさるべき御様子也
こう申せばそなたはお笑い被成候なされそうろうかは存じ不申もうさず候えども、手紙の着きし当日より一日も早くもとのようにお成り被成なされ候ように○○どこそこのお祖師さまへ茶断ちゃだちして願掛け致しおり候まま
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「闇に梅匂ふ」の趣向は最早打どめに被成なされては如何いかがや。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そのゝちは格別のこともなく、匇々そう/\に札をお附け被成なされ、急ぎ御夫婦とも蚊帳の内へ御入被遊あそばされ候、尤も夜半に及ぶまでむつまじき御物語の御様子にて、おん仲至極めでたかりし事共也
闇の梅に限らず普通の梅の香も古今集だけにて十餘りもありそれより今日迄の代々の歌よみがよみし梅の香はおびたゞしく數へられもせぬ程なるにこれも善い加減に打ちとめて香水香料に御用ひ被成なされ候は格別其外歌には一切之を
歌よみに与ふる書 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)