行倒ゆきだふれ)” の例文
勿論小さな躓跌つまづきから大なる悲劇の主人公となツて行倒ゆきだふれとなツた事業家もあツたらうし、冷酷な世間から家を奪はれて放浪の身となツた氣の老夫おやぢもあツたらう。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
これ当今たうこんでは出来できませぬが、昔時むかし行倒ゆきだふれ商売しやうばいにしてた者があります。無闇むやみうちまへ打倒ぶつたふれるから
行倒の商売 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
此頃はもう四年前から引き続いての飢饉ききんで、やれ盗人ぬすびと、やれ行倒ゆきだふれと、夜中やちゆうも用事がえない。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
行倒ゆきだふれの乞食の懷から小判で百兩出たといふ話には驚かないが、その行倒れを毒死と睨んだ平次親分の目には恐れ入つたよ、——此處は馬道だから、筋を言や俺の繩張りだが
耳がいのか、おめえの目にや、わたしと云ふものが何と見えるんだ、——何処どこの者とも知れねエ乞食女の行倒ゆきだふれの側に、ヒイ/\泣いてる生れたばかりの女の児が、あんまり可哀さうだつたから拾ひ上げて
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
下物さかなに飮むほどに空腹すきばらではあり大醉おほよひとなり是から一里や二里何の譯はない足が痛ければ轉げても行くこゝさへ此の絶景だものかねて音に聞き繪で惚れて居る寐覺ねざめ臨川寺りんせんじはどんなで有らう足が痛んで行倒ゆきだふれになるとも此の勝地にはうぶられゝば本望だ出かけやう/\と酒がいはする付元氣つけげんき上松あげまつから車を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
何故世の中には情死しんぢう殺人ひとごろし強盗がうとう姦通かんつう自殺じさつ放火はうくわ詐欺さぎ喧嘩けんくわ脅迫けふはく謀殺ぼうさつの騒が斷えぬのであらうか、何故また狂人きちがひ行倒ゆきだふれ乞食こじき貧乏人びんぼうにんが出來るのであらうか。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)