蓮葉はすっぱ)” の例文
まだ気づかわしそうな眼でほほ笑むと、つと蓮葉はすっぱに男の側へ歩み寄って、「長い事御待たせ申しまして。」と便なさそうに云いました。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
自分と省作との関係を一口に淫奔いたずらといわれるは実に口惜くやしい。さりとて両親の前に恋を語るような蓮葉はすっぱはおとよには死ぬともできない。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
貴女きじょと言っても少し蓮葉はすっぱな心が内にあって、表面が才女らしくもあり、無邪気でもあるような見かけとは違った人は誘惑にもかかりやすく
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
菊子、おまえのような蓮葉はすっぱものがようまア家に帰って来られたものじゃなア。出て行ってくれ! おまえのために、この安治川の家が汚された。
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
出が良いから品と云い応対と云い蓮葉はすっぱとこは少しもありません、落着いて居て、盃を一つ受けるにも整然ちゃんと正しいので
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とのぞきこんだとき、ホホホホ! と蓮葉はすっぱな嬌笑とともに、栄三郎を振り払ったお艶、こともなげに軽くいい放った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「よく考えてみましたら、先刻のお願いは、蓮葉はすっぱな事だと気が附きました。Tには何もおっしゃらなくてもいいのです。ただ、お見送りだけ、して下さい」
驚いて見上げる私を蓮葉はすっぱに眼で笑ってそのまま清ちゃんの姉さんと手を引き合って人々の後を追って行った。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「待っててや。逃げたらあかんし」と蓮葉はすっぱに言って、赤い斑点の出来た私の手の甲をぎゅっと抓ると、チャラチャラと二階の段梯子を上って行ったが、やがて
世相 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「そんなに思いをかけてる人であるなら、みんなくれてお仕舞いなさいよ。その方がせいせいして、どんなに好いか知れやしない」お島は蓮葉はすっぱに言って笑った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
波蘭輪舞マズルカのような¾拍子を踏みながら、クルクル独楽こまみたいに旋廻を始めたが、卓子テーブルの端にバッタリ両手を突くと、下った髪毛かみのけ蓮葉はすっぱに後の方へ跳ね上げて云った。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
この聖なる空間をぷろぺらできみだし、鳥族のごとく空を流れるさえあるに、あまつさえそれを近代的だなぞと誇称して蓮葉はすっぱになっているうちに、これだけでも冒涜、不遜
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
蓮葉はすっぱだった女は語るに連れて、それでもだんだん女らしさを取りかえしてくるようだった。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「又年寄がお邪魔に来ましたよ。若い者同志だと、時々喧嘩けんかなどを始めるものだから」などと、その年齢には丸きり似合わないような、気さくな、年寄にしては蓮葉はすっぱ挨拶あいさつをしながら
ある恋の話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼女は男どもをからかい、しきりに秋波を送ったり、卑猥ひわいな空気で皆を包み込んだりしていた。手におえない蓮葉はすっぱ女だった。おそらくグライヨーと通じて彼を裏切ってるかもしれなかった。
満面にえみを含んだ、め組は蓮葉はすっぱ帽子の中から、夕映ゆうやけのような顔色がんしょく
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蓮葉はすっぱとも何とも思われる懸念が無かったからである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
〽都育ちは蓮葉はすっぱなものじゃえ
京鹿子娘道成寺 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
田舎いなか風に洒落しゃれたところができていて、品悪く蓮葉はすっぱであれば、人型ひとがたもまた無用とするかもしれないのであると思い直しもした。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「どうも、きょうは、ありがとう。」蓮葉はすっぱな口調で言って、顔を伏せ、そっと下唇を噛んだ。
火の鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「それどころですか、」イリヤはちょっと蓮葉はすっぱな云い方をして
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
これを男の冷淡さからとはまだ考えることができないのであるが、蓮葉はすっぱな心にもうれいを覚える日があったであろう。
源氏物語:03 空蝉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
例の蓮葉はすっぱな大臣の娘が聞いて、女御の居間に頭中将や少将などの来ている時に出て来て言った。
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
蓮葉はすっぱな女房たちはひじを突き合って笑っている所へ大臣が出て来て手紙を読んでみた。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
静かな性質を少し添えてやりたいとちょっとそんな気がした。才走ったところはあるらしい。碁が終わって駄目石だめいしを入れる時など、いかにも利巧りこうに見えて、そして蓮葉はすっぱに騒ぐのである。
源氏物語:03 空蝉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
娘であった割合には蓮葉はすっぱな生意気なこの人はあわてもしない。
源氏物語:03 空蝉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
五節も蓮葉はすっぱらしく騒いでいた。
源氏物語:26 常夏 (新字新仮名) / 紫式部(著)