葉摺はず)” の例文
小枝は葉摺はずれしてさらさらと此方に撓いて来つ。風少しある時殊に美しきは、金紙きんし、銀紙をこまかく刻みて、蝶の形にしたるなりき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして耳を澄ませば、どこからともなくサヤサヤと風にそよ葉摺はずれの音がかすかに伝わってくるような気持であった。しかもよほど心気が疲れていたのであろう。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
この上に東天紅とうてんこうのそよ風なびいて、葉摺はずれの音をどくろの唄と聞かせている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ひそやかな葉摺はずれが空中に消えると
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
をんなざうどう仰向あふむけに、かたふなべりにかゝつて、黒髪くろかみあしはさまり、したからすそけて、薄衣うすぎぬごとかすみなびけば、かぜもなしにやはらかな葉摺はずれのおとがそよら/\。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
葉摺はずれは空中にそよぐ
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
串戯じょうだんではない。日向ひなたさっと村雨がかかった、すすき葉摺はずれの音を立てて。——げに北国の冬空や。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……沼は、と見れば、ここからは一面の琵琶びわを中空に据えたようで、あし葉摺はずれに、りんりんと鳴りそうながら、一条ひとすじ白銀しろがねの糸もかからず、暗々として漆して鼠が駈廻かけまわりそうである。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)