菊五郎きくごろう)” の例文
専門には相違ないが、例えば芝居を見ても団十郎だんじゅうろうとか菊五郎きくごろうとかいう名人がおっても、これを批評するものがないとその真の技倆ぎりょうは分らない。
政治趣味の涵養 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
もっとも日本人菊五郎きくごろうはくふうを隠すことに骨を折りドイツ人ヤニングスはくふうを見せる事をつとめているという相違はあるかもしれない。
映画雑感(Ⅳ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
気の利いた所が菊五郎きくごろうで、しっかりした処が團十郎だんじゅうろうで、その上芝翫しかんの物覚えのよいときているから実に申分もうしぶんはございません。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それが今、自分の眼にはかえって一層適切に、黙阿弥もくあみ小団次こだんじ菊五郎きくごろうらの舞台をば、遺憾なく思い返させた。あの貸舟、格子戸づくり、忍返し……。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
せん団十郎だんじゅうろう菊五郎きくごろう秀調しゅうちょうなぞも覚えています。私がはじめて芝居を見たのは、団十郎が斎藤内蔵之助さいとうくらのすけをやった時だそうですが、これはよく覚えていません。
文学好きの家庭から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
▲それから、故人の芙雀ふじゃくが、亡父おやじ菊五郎きくごろうのところへ尋ねて来た事、これはみやこ新聞の人に話しましたから、彼方あっちへ出たのを、またお話しするのもおかしいからします。
薄どろどろ (新字新仮名) / 尾上梅幸(著)
その春興行には五世菊五郎きくごろうが出勤する筈であったが、病気で急に欠勤することになって、一座は芝翫しかん(後の歌右衛門うたえもん)、梅幸ばいこう八百蔵やおぞう(後の中車ちゅうしゃ)、松助まつすけ家橘かきつ(後の羽左衛門うざえもん
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
菊五郎きくごろうであったか、芝翫しかんであったか、この紅勘のことを芝居にしたことがありました
吉右衛門きちえもん菊五郎きくごろうはどうも歌舞伎のオオソドックスに忠実だとはおもえません。まア羽左衛門うざえもんあたりの生世話きぜわの風格ぐらいが——」などにもつかぬ気障きざっぽいことを言っていると、突然とつぜん
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
団十郎だろうが菊五郎きくごろうだろうが、日本広しといえどもおれにまさる役者はないという鼻息だ。何でもこの町を振り出しに、近く東京の檜舞台ひのきぶたいを踏んで、その妙技を天下に紹介するということだった。
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
はるか先に五代目菊五郎きくごろうの別荘があるとか聞きました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
岩「貴方木暮武太夫へ菊五郎きくごろうが湯治に来て居ります、家内を連れて来て居ります、松助まつすけも連れてるそうです」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
のみならず「橋本」へ来たことさへあるかないかわからない位である。が、五代目菊五郎きくごろうの最初の脳溢血なういつけつを起したのは確かこの「橋本」の二階だつたであらう。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こういう点で細かいくふうをするのがどこか六代目菊五郎きくごろうの凝り方と似たところがありはしないか。
映画雑感(Ⅳ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
いつか田舎いなかから出て来た親戚しんせきの老婦人を帝劇へ案内して菊五郎きくごろう三津五郎みつごろうの舞踊を見せた時に
丸善と三越 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
私はこの芝居見物の一日が、舞台の上の菊五郎きくごろう左団次さだんじより、三浦の細君と縞の背広と楢山の細君とを注意するのに、より多く費されたと云ったにしても、決して過言じゃありません。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
云っちゃアいけないよ、お前は姿なりのいゝ人を見るとへい/\云って、姿の悪い人を見るとさげすんでいけないよ、此の間も立派な人が来たから飛出して往って土下座したって、そうしたら菊五郎きくごろうが洋服を
ずっと前に菊五郎きくごろう三津五郎みつごろうの「棒縛り」を見ておもしろいと思ったことがあった。
踊る線条 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
同じようなことをしばしば菊五郎きくごろう三津五郎みつごろうの踊りで見ることがある。
映画雑感(Ⅶ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)