若年じゃくねん)” の例文
「さすがにいまだご若年じゃくねん、ごむりではありますが、だいじなときです。お心をしかとあそばさねば、この大望たいもうをはたすことはできません」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若年じゃくねん折柄おりからしかと意見を致したことはございましたが、此のたびの事には実にあきれ果てましてなんともお詫のしようがございません
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
実を云うとどてらがこんな事を饒舌しゃべるのは、自分を若年じゃくねんあなどって、好い加減に人をだますのではないかと考えた。ところが相手は存外真面目である。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まだ若年じゃくねんで去年ようよう番入りをしたばかりであるから、屋敷内のことはやはり祖父が支配していたのである。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ことに若年じゃくねんの頃には、兵法にうとからざりしというのであるから、ゆめ油断はならぬと思っていた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
天下こぞって誅戮ちゅうりくを加うべきはずに候えども、大樹たいじゅ(家茂)においてはいまだ若年じゃくねんの儀にて、諸事奸吏どもの腹中よりで候おもむき相聞こえ、格別寛大の沙汰さたをもって
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
船王は閨房けいぼう修まらず、池田王は孝養にけるところがあり、塩飽王は上皇がその無礼を憎まれており、ただ、大炊王だけは若年じゃくねんながら過失をきいたことがないから、と、押勝の筋書通り
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
昨夕来泊した若年じゃくねんの測量技手星正一君にも面会。星君が連れた若い人夫が、食饌のあと片付、掃除、何くれとまめ/\しく立働くを、翁は喜ばしげに見やって、声をかけ、感心だとめる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それがし事は」と若年じゃくねんの武士はそれに続いて名のるを聞けば
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かねてから主君勝家かついえは、若年じゃくねんにおわし、しかも、孤立無援こりつむえんに立ちたもう伊那丸いなまるさまへ、よそながらご同情いたしておりました。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分は若年じゃくねんであったから、社会とはどんなものか、その当時明瞭めいりょうに分らなかったが、何しろ、安さんを追い出すような社会だからろくなもんじゃなかろうと考えた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
殊に七蔵の主人の市之助はまだ若年じゃくねんであるので、勿論そんなことは家来まかせにして置いた。
半七捕物帳:14 山祝いの夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
謙信、若年じゃくねんなるがために、このたびのわが行動を、無謀とも案じるのであろうが、怪しむをやめよ、謙信は決して、軽躁けいそう、功をあせっているのではない。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わたしのほかに俊乗、まだ若年じゃくねんでござりますが、これに役僧を勤めさせて居ります」と、祥慶は答えた。「ほかは納所の了哲と小坊主の智心、寺男の源右衛門、あわせて五人でござります」
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ましてや、若年じゃくねん巽小文治たつみこぶんじは、必然、まッ二つか、袈裟けさがけか? どっちにしても、助かりうべき命ではない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若年じゃくねん、山に籠り秀吉に説かれて、ついに山を出で、ここ十余年の久しきあいだを、血のちまた、世間の危路、あらゆる道をあるいたものの、依然、彼の心は、山にあって
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若年じゃくねんから御所のまもりに立つ弓取の身として、それだけは頼政も、痛恨事としていたとみえて、ある時、殿上の人に、所懐しょかいの和歌をそっと示したところ、みかどのお耳にはいって
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若年じゃくねんのころは知らず、近ごろに至って、親鸞がひそかに思うに、この愚禿ぐとくが、人に何を教えてか、弟子を持つなどといわれるより、それゆえに親鸞は一人の弟子も持たぬ者と思いおります。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
霊帝はまだご若年じゃくねんなので、その悪弊に気づかれていても、いかんともするすべをご存じない。また、張均の苦諫くかんに感動されても、何というお答えもでなかった。ただ眼を宮中のにわへそらしておられた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも、義詮はまだ若年じゃくねんだ。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)