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苗束
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なへたば
「さうら
此れ
掛けて、
此れが
晩稻の
花だ」
兼博勞は
手にした
小麥粉を
悉く
掛けて
畢つた。
苗束は
少し
白く
成つた。
「そんだつて
酒つちや
人の
口さ
入える
樣に
出來てんだから、それ
證據にや
俺らが
口さ
入えりやすぐ
利くから
見ろえ」
兼博勞はいつた。
亭主は
又苗束へ
香煎を
少し
振り
掛けた。
「さうだつけな、ほんに」
亭主はいきなり一
本の
徳利を
手にして
土間へおりた。
竈の
上の
煤けた
小さな
神棚へは
田から
提げて
來た一
把の
苗が
載せてあつた。
彼は
其苗束へ
徳利から
少し
酒を
注いだ。