芋殻いもがら)” の例文
ワンナ 千葉、茨城二県の農村で、芋殻いもがら一名ズイキの乾したのをワンナといっている。今では語原を知る者はないが、割菜であろうと思う。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これを落ち鮎、さば鮎、芋殻いもがら鮎などといって、奥山から渓水と共に流れきたった落葉と共に、やなへ落ち込むのである。
季節の味 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
「へえ、それゃあもうよくわかるんですが、なにしろわっちは家柄だの芋殻いもがらなんてええごいものはでえ嫌えなんで」
長屋天一坊 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
身代りになるおんななぞは、白衣びゃくえを着せてひなにしょう。芋殻いもがらの柱で突立つったたせて、やの、数珠じゅずの玉を胸に掛けさせ
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若いよめのおまき母屋もやから、下女のお徳は井戸ばたから、下男佐吉は木小屋の方から集まって来て、洗いたての芋殻いもがら(ずいき)が半蔵の眼前に山と積まれた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
芋殻いもがらを負うて立つような軽さである。善助は、戦友の太兵衛、久左衛門をかえりみて
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いとど得意とくい面持おももち天狗てんぐさんはそうって、つづいてにせるえだをば、あたかもそれが芋殻いもがらでもあるかのように、片端かたっぱしからいきむしってはて、むしってはて、すっかり粉々こなごなにしてしまいました。
顔色青き白雲天窓しらくもあたま膨脹ふくだみて、えりは肩に滅入込めいりこみ、手足は芋殻いもがらのごとき七八歳ななつやつの餓鬼を連れたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)