肩頭かたさき)” の例文
あねは、ずっとせいたかかった。そして、くろかみが、なが肩頭かたさきかられていました。彼女かのじょは、指先ゆびさきでそのかみをいじっていました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
宮の肩頭かたさきりて貫一は此方こなたに引向けんとすれば、すままに彼はゆるく身をめぐらしたれど、顔のみは可羞はぢがましそむけてゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
これまでなりと観念したる白糸は、持ちたる出刃を取り直し、躍り狂う内儀ののんど目懸めがけてただ一突きと突きたりしに、ねらいをはずして肩頭かたさきりたり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
肩頭かたさきよりかすかにふるへた。
もつれ糸 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
隅棚すみだなの枕時計ははた秒刻チクタクを忘れぬ。ますます静に、益す明かなるねやの内には、むなしともむなしき時の移るともなく移るのみなりしが、たちまち差入る鳥影の軒端のきばに近く、したる宮が肩頭かたさき打連うちつらなりてひらめきつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
物可恐ものおそろしげなる沢の名なるよ。げに思へば、人も死ぬべき処の名なり。我も既に死なんとせしがと、さすがうつつの身にもむ時、宮にはあらで山百合やまゆりの花なりし怪異を又おもひて、彼は肩頭かたさき寒くふるひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)