考慮かんがえ)” の例文
お桂さんの考慮かんがえでは、そうした……この手段を選んで、小按摩を芸妓屋げいしゃや町の演芸館。……仮装会の中心点へ送込もうとしたのである。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、普通の日本人の考慮かんがえから云うと、殺した方の人が化けて出るというのは、と理屈に合わぬようにきこえるが、何分にも其処そこが怪談、万事不可思議の所が事実譚じじつだん価値ねうちであろう。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
貴方あなたもいよいよふか考慮かんがえるようにったならば、我々われわれこころうごかところの、すべての身外しんがい些細ささいなることはにもならぬとおわかりになるときがありましょう、ひと解悟かいごむかわなければなりません。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そうした考慮かんがえが、お鯉自身から生れようか、生れるはずがないのである。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「もう少し各自めいめいの自由ということを、考慮かんがえいただきたいと思います」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
気が気でないのは、時がおくれて驚破すわと言ったら、赤い実を吸え、と言ったは心細い——一時半時いっときはんじを争うんだ。もし、ひょんな事があるとすると——どう思う、どう思う、源助、考慮かんがえは。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、誰の考慮かんがえも同じことで、ここで何時いつまで争った所で水掛論に過ぎない。これだけに釘を刺して置けばいと思ったのであろう、お政は相変らず嫣然にこにこ笑いながら、更に話をほかそらした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
右の通りで、此方こっちでは何の種もかなかったが、結局は此方こっちが自ら刈らねば成らぬような羽目に陥ったのは、市郎の不幸であった。此方こっちには何の考慮かんがえもなかったが、恋の種はお葉の胸に播かれた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)