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羈絆
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きはん
ふりがな文庫
“
羈絆
(
きはん
)” の例文
それは
囚
(
とら
)
われの繩を解かれたような、
妄執
(
もうしゅう
)
がおちたような、その他もろもろの
羈絆
(
きはん
)
を脱したような、すがすがしく濁りのない顔に返った。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
男と女との踵に重い今日の社会的
羈絆
(
きはん
)
から諸共に解放されようとする、その役に立てるものの意味として理解するのである。
昨今の話題を
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
之
(
これ
)
に反して、魂と魂との一致によりて堅く結ばれたる夫婦関係は、肉体の
羈絆
(
きはん
)
を脱した
暁
(
あかつき
)
に
於
(
おい
)
て、更に一層の強度を加える。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
しかし彼の愛国は、軍馬によってローマの政治的
羈絆
(
きはん
)
を脱しようと策動するのたぐいではありません。彼は救いの問題を根本的に考えておられる。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
遠い昔に
溯
(
さかのぼ
)
って見れば見る程、人間は共同生活の束縛を受けていたのだ。それが次第にその
羈絆
(
きはん
)
を脱して、自由を得て、個人主義になって来たのだ。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
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何の
羈絆
(
きはん
)
も拘束もなく、興に乗じては嶺から嶺を渡り歩いて、山で死ぬ日をすら美しく脳裏に画いた若い日は、もう私には再び帰って来ないのか……。
続スウィス日記(千九百二十三年稿)
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
彼は焔に包まれて、宙に浮いてゐるやうな、目まぐるしい心の軽さを覚えて、総ての
羈絆
(
きはん
)
を絶ち切つて、何処までも羽をのす事が出来るやうにも思つた。
An Incident
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
だが私は現在の
羈絆
(
きはん
)
の上に更に羈絆を重ねるのは、とてもたまらないと思つた。そしてこの考へが、やがて勝利を占めた。私は破壊の時が来たと思つた。
母たち
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
でもそういう責任や
羈絆
(
きはん
)
を感ずれば感ずる程また一方に家庭への反逆心も起ろうというもんです。はははは……人間なんて、殊に男なんて勝手なもんですな。
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
されば物の理屈を考えるにあたっては、できるだけ言葉の
羈絆
(
きはん
)
を脱し、決して言葉にとらえられて、むだなことに頭脳をなやまさぬように充分注意せねばならぬ。
我らの哲学
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
フラマン人は
西班牙
(
スペイン
)
政庁の
羈絆
(
きはん
)
を脱するや最近十九世紀の文明に乗じて一大飛躍を試みたる国民たり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
超短波は電気天井を抜け、地球の
羈絆
(
きはん
)
を切って一直線に宇宙へ
黙々
(
もくもく
)
として前進しているのです。
科学が臍を曲げた話
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
事実、米友なればこそです、子熊とはいえ、
羈絆
(
きはん
)
を脱して自由を求むる本能性の溢れきったこの猛獣族を、この場合に取って抑えることのできたのは米友なればこそです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一様に推移し流下する黒い幕のような時の束縛と
羈絆
(
きはん
)
から
遁
(
のが
)
れ出るとき、私は無限を獲得するのでないか。なぜなら自己活動的なものは無限なものでなければならないから。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
世界の文明、世界のあらゆる科学を応用して、
而
(
しか
)
して中古的、専制的、封建的の
羈絆
(
きはん
)
を脱却してついに立憲の政治を行い、憲法を制定し宗教の自由を認めたという国柄である。
東亜の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
その結果、半途にして学校を退くようになった。当時思うよう、学問は必ずしも独学にて成し遂げられないことはあるまい、むしろ学校の
羈絆
(
きはん
)
を脱して自由に読書するに
如
(
し
)
くはないと。
或教授の退職の辞
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
窮屈な
羈絆
(
きはん
)
の暑さのない所には自由の涼しさもあるはずはない。一日汗水たらして働いた後にのみ浴後の涼味の
真諦
(
しんたい
)
が味わわれ、義理人情で苦しんだ人にのみ自由の涼風が訪れるのである。
涼味数題
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
たとえばギリシア国がトルコの
羈絆
(
きはん
)
を脱して独立国となりたるがごとき、イタリアがオーストリアの管轄を離れてその国体を新造したるがごとき、スペインの仏における、仏の独における
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
男の子はさまで親を
懊悩
(
おうのう
)
させはしないだろうが、女はどうせ女で、親が何と思っても宿命に従わせるほかはないのでしょうが、それでも
愍然
(
ふびん
)
に思われて、親のためには大きな
羈絆
(
きはん
)
になりますよ
源氏物語:48 椎が本
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
人間の仲間入りをして社会の
羈絆
(
きはん
)
の中に暮そうと思えばこそ、そこには粉飾もあれば
粉黛
(
ふんたい
)
もあり、恥もあれば忍辱もあり、私の四十何年の憂鬱至極な生活の鬱積があり、感情の
跼蹐
(
きょくせき
)
があった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それは
囚
(
とら
)
われの
縄
(
なわ
)
を解かれたような、
妄執
(
もうしゅう
)
がおちたような、その他もろもろの
羈絆
(
きはん
)
を脱したような、すがすがしく濁りのない顔に返った。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
性関係における自主的選択が女に許されていなかった過去の
羈絆
(
きはん
)
は、そういう相互のいきさつの間に形を変えて生きのこり、現れたのであった。
若き世代への恋愛論
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
これこそは愛が直接に人間に与えた愛子だといっていい。立派な音楽は聴く人を凡ての地上の
羈絆
(
きはん
)
から切り放す。人はその前に気化して直ちに運命の本流に流れ込む。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
言葉の
羈絆
(
きはん
)
から脱するように努めながら、一歩一歩誤りの入りきたらぬように注意して進むつもりであるが、これは従来の哲学を全く眼中におかず、新たな道を進むことにあたる。
我らの哲学
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
津田君といえども伝習の
羈絆
(
きはん
)
を脱却するのは困難である。あるいは支那人や
大雅堂蕪村
(
たいがどうぶそん
)
やあるいは
竹田
(
ちくでん
)
のような幻像が絶えず眼前を横行してそれらから強い誘惑を受けているように見える。
津田青楓君の画と南画の芸術的価値
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
しかしてかの英国はなにがゆえにかくのごとくすみやかに封建の
羈絆
(
きはん
)
を脱し、かくのごとくすみやかに帝王の専制を脱し、かくのごとくすみやかに宗教の専制を脱し、妄想迷信の専制を脱し
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
文学や音楽なぞという限定された趣味に
耽
(
ふけ
)
ることが許されず、いかにして国力を充実させて英国の
羈絆
(
きはん
)
から祖国を解放するかということに、その関心のすべてが傾け尽されているように思われた。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
先ず、女性の作家に加えられた評言に就て反省して見る事は、即ち
持
(
ママ
)
つならば或る欠点や、
羈絆
(
きはん
)
から脱して、よりよい次の一歩を踏出す事に成るのではないだろうか。
概念と心其もの
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
昔にあっては何が宗教にかくの如き権威を附与し、今にあっては、何が私達の見るが如き退縮を招致したか。それは宗教が全く智的生活の
羈絆
(
きはん
)
に自己を
委
(
ゆだ
)
ね終ったからである。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ここにもっとも注意せねばならぬのは言葉の
羈絆
(
きはん
)
から脱するということである。
我らの哲学
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
社会生活の複雑な旧い
羈絆
(
きはん
)
が文学を害することの夥しいことに驚かざるを得ないだろうと思う。
文芸時評
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
“羈絆”の意味
《名詞》
妨げとなる物事。
(出典:Wiktionary)
羈
漢検1級
部首:⽹
24画
絆
漢検1級
部首:⽷
11画
“羈”で始まる語句
羈旅
羈
羈客
羈縻
羈靮
羈中吟