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繽紛
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ひんぷん
ふりがな文庫
“
繽紛
(
ひんぷん
)” の例文
二人の悲しい宿命をさながら形に現わしたように、風なきに桜花が
繽紛
(
ひんぷん
)
と散り、肩に懸かり裾に乱れ二人は落花に埋もれようとした。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
去れど心さす方のある身には如何ばかり苦しかるらん、今も尚ほ
繽紛
(
ひんぷん
)
として止まんともせず、せめては雪のはるゝを待ちて登山せん
雪中の日光より
(旧字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
湛然
(
たんぜん
)
として音なき秋の水に臨むが如く、
瑩朗
(
えいろう
)
たる
面
(
おもて
)
を過ぐる
森羅
(
しんら
)
の影の、
繽紛
(
ひんぷん
)
として去るあとは、太古の色なき
境
(
さかい
)
をまのあたりに現わす。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
落花
繽紛
(
ひんぷん
)
として屋台の内部にまで吹き込み、意気さかんの弓術修行者は酔わじと欲するもかなわぬ風情、御賢察のほど
願上候
(
ねがいあげそうろう
)
。
花吹雪
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
天地は荒唐
晦冥
(
かいめい
)
の中に
繽紛
(
ひんぷん
)
と天華
乱墜
(
らんつい
)
するような光景なり行動なりになってこそ、いまのわたくしの気分に相応わしくあり
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
二官の家の庭先の桜が、なんの凶兆を暗示してか、しきりに降り散って、それが山屋敷じゅうに
繽紛
(
ひんぷん
)
と、高く低く、迷っているかに見えました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
玉の
甃
(
いしだたみ
)
暖かにして、落花自ずから
繽紛
(
ひんぷん
)
たり、朱楼紫殿玉の欄干
金
(
こがね
)
を
鐺
(
こじり
)
にし
銀
(
しろがね
)
を柱とせり、その壮観奇麗いまだかつて目にも見ず、耳にも聞かざりしところなり。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
折ふし延宝二年
臘月
(
ろうげつ
)
朔日
(
ついたち
)
の雪、
繽紛
(
ひんぷん
)
として六美女の名に
因
(
ちな
)
むが如く、
長汀曲浦
(
ちょうていきょくほ
)
五里に亘る行路の絶勝は、
須臾
(
たちまち
)
にして
長聯
(
ちょうれん
)
の
銀屏
(
ぎんぺい
)
と化して、虹汀が
彩管
(
さいかん
)
に
擬
(
まが
)
ふかと疑はる。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
右も桜左も桜、上も桜下も桜、天地は桜の花にうずもれて
白
(
はく
)
一白
(
いっぱく
)
、
落英
(
らくえい
)
繽紛
(
ひんぷん
)
として顔に冷たい。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
南は富士の山、北は金峰山、名にし負う甲斐の国の四方を囲む山また山の姿を一つも見ることはできないので、ただ
霏々
(
ひひ
)
として降り、
繽紛
(
ひんぷん
)
として舞う
雪花
(
せっか
)
を見るのみであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
繽紛
(
ひんぷん
)
として花が浮動する。次いで天人が舞う。退場。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
春雪
(
しゅんせつ
)
の
繽紛
(
ひんぷん
)
として舞ふを見よ
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
で絶えず
繽紛
(
ひんぷん
)
と散った。
仮面
(
めん
)
の上へ落ちるのもあり、袍の上へ落ちるのもあり、手足の上へ落ちるのもあり、落花は彼を埋めようとした。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
繽紛
(
ひんぷん
)
と舞う雪のなかを、彼はやがて、赤い顔して帰って来た。——そしてこんな日のこと、さだめし兄も饅頭売りはお休みだろうと思っていたらしく
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
繽紛
(
ひんぷん
)
と散る雪紙の中で、むす子は手早く取替えて、かの女にナポレオン帽を渡した。かの女は
嬉
(
うれ
)
しそうにそれを冠った。ジュジュ以外のものも、銘々当った冠りものを冠った。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
篠井の里の片端、野菜の緑に
囲繞
(
いにょう
)
されて、一軒の農家が立っていた。背戸には咲き乱れた桜の花が、今昼風に
繽紛
(
ひんぷん
)
と散り、その
花弁
(
はなびら
)
の幾片かが縁の中へまで舞い込んで来た。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
柳葉
繽紛
(
ひんぷん
)
と散りしだき、紅錦の袍は、ひらひらと地に落ちてきた。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ほとほと訪れて叩くと、
墻
(
かき
)
の梅が
繽紛
(
ひんぷん
)
とこぼれ落ちてくる。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
落花は
繽紛
(
ひんぷん
)
、その時、
一風
(
ひとかぜ
)
吹きて。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“繽紛”の意味
《名詞・形容動詞》
いろいろなものが入り乱れて盛んなさま。
(花びらや粉雪などが)乱れ飛ぶさま。
(出典:Wiktionary)
繽
漢検1級
部首:⽷
20画
紛
常用漢字
中学
部首:⽷
10画
“繽紛”で始まる語句
繽紛絡繹
繽紛狼藉