節季せっき)” の例文
もっと師走しわすに想像をたくましくしてはならぬと申し渡された次第でないから、節季せっきに正月らしい振をして何か書いて置けば、年内にもちいといて
元日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
農夫の立場から見れば、嫁取よめとり聟入むこいり・御産・元服・節季せっき・正月などという語と同じ程度に、胸のとどろきなしには用いることのできぬ語であった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その頃、ふうをなして行われた試験間際に徹夜の勉強、終夜ととなえて、気の合った同志が夜あかしに演習おさらいをする、なまけものの節季せっき仕事と云うのである。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だがその日その日を遊んで暮らすものに取っては、ちょうどなまけ者が節季せっき狼狽ろうばいすると同じもので、いまさらながら地獄のおそろしさをしみじみと知るのである。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
節季せっき師走しわすに気の毒だな。あんまりいい御歳暮でも無さそうだが、しゃけの頭でも拾う気でやってくれ」
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なにしろ通貨をあつかう場所なので、金局の平役以下、手伝い、小役人、吹所の棟梁、手伝い、職人らはみな金座地内の長屋にすみ、節季せっきのほかは門外に出ることは法度はっと
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
蕪村ぶそん天明てんめい三年十二月二十四日に歿したれば節季せっきの混雑の中にこの世を去りたるなり。しかるにこの忌日きじつを太陽暦に引き直せば西洋紀元千七百八十四年一月十六日金曜日に当るとぞ。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そろってそんな風なつもりで待っていると、借りた人は忘れた顔をしている。しびれを切らして催促すると次の節季せっきにしてくれといわれたり、そんなはずがないととぼける人さえあった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
おりんは土地での嫌はれ者、庄造はあの通りでさつぱり信用がなかつたから、諸払ひの滞りなどもやかましく催促されたものだが、彼女への同情があつたればこそ節季せっきが越せて行つたのではないか。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
都会ではまた節季せっきというものがあって、それはまた全く別個の事務となっているのだが、それもこれも一続きのセツの中であったことは、正月の飯米用意をセチきといい
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
なにぶん表沙汰にしては工合ぐあいが悪いので、どこまでも内密に探索して貰いたいとおっしゃるのだから、あなたから詳しい話をうかがって、節季せっき前に気の毒だが一つ働いてくれと……。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それも句作に熱心で壁柱かべはしらへでも書き散らしかねぬ時代ならとにかく、書く材料の払底ふっていになった今頃、何か記念のためにと、短冊たんじゃくでも出された日には、節季せっきに無心を申し込まれるよりもつらい。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なまけものの節季せっきばたらきとか言って、試験の支度したくに、徹夜で勉強をして、ある地誌略ちしりゃくを読んでいました。——白山はくさんは北陸道第一の高山にして、郡の東南隅とうなんぐうひいで、越前えちぜん美濃みの飛騨ひだまたがる。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おりんは土地での嫌はれ者、庄造はあの通りでさつぱり信用がなかつたから、諸払ひのとどこおりなどもやかましく催促されたものだが、彼女への同情があつたればこそ節季せっきが越せて行つたのではないか。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
節季せっきはもう眼の前につかえているんじゃありませんか。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)