程経ほどへ)” の例文
旧字:程經
九月も末近くなると、ず三枝さんがお引き上げになり、程経ほどへて日向さんもとうとう爺や一人をお残しになって東京へお帰りになられました。
朴の咲く頃 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
尾でもって鐘をたたくと、ほのおが燃え上る——寺の坊さんたちは頭をかかえて逃げ出したが、程経ほどへて帰って見ると、鐘はもとのままだが、蛇はいない
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あねは、それから程経ほどへて、大尽だいじん屋敷やしきからもどってきました。おもったより、たいへんに時間じかんがたったので、おとうとはどうしたろうと心配しんぱいしてきたのであります。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
つのも生えて居なければ尻尾しっぽのある者でもない、至極しごく穏かな人間だと云う所からして、段々懇親になったと云うその話は、程経ほどへて後に内々嶋津から聞きました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
世の中にこんなうまいものがあるだろうかと思ったが、程経ほどへて、てんぷら、おやこ、ごもく、おかめなどという種蕎麦のあることを知って、誠に驚かざることを得なかった。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
光春も、程経ほどへてから、やがてそこを出て来た。そして廊下を歩みながら侍部屋へ声をかけた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
程経ほどへさい心覚こころおぼえにつけた日記を読んで見て、その中に、ノウヒンケツ(狼狽ろうばいした妻は脳貧血をかくのごとく書いている)を起し人事不省におちいるとあるのに気がついた時、余は妻は枕辺まくらべに呼んで
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
程経ほどへてこれを発見せし実父母は驚駭きょうがいくところをらず。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
程経ほどへて聞けばその浦賀で上陸して飲食のみくいした処は遊女屋だとう。れはその当時私は知らなかったが、そうして見るとの大きな茶椀は女郎の嗽茶椀うがいぢゃわんであったろう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それからのち程経ほどへて、東海道の駅々を、どこで手に入れたか一ちょうの三味線を抱えて、東へ下るお君の姿を見ることになりました。そのあとには例のムク犬がついています。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
程経ほどへて後のそこには、最前新陰堂に坐っていた客と主人側だけの頭数だけが残っていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
程経ほどへて僕らは起きた。それからなるべく寒くないように著込んで階段をのぼって行き、東方にむかう窓のところに佇立ちょりつして、いまだ黒く明け切らない、山脈の上の空がほんのりと黄色いのを見ていた。
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
その後程経ほどへて文久元年の冬、洋行するとき、長崎に寄港して二日ばかり滞在中、山本の家を尋ねて先年中の礼を述べ、今度洋行の次第を語り、そのとき始めて酒の事を打明うちあ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それからまた程経ほどへて、河沿いの間道かんどうを、たった一人で竜之助が帰る時分に月が出ました。
程経ほどへていった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)