確実たしか)” の例文
旧字:確實
人間の概念かんがえで一番共通で確実たしかなものは、「数」だとされています。故に精密な物理学の理論などは、専ら数学で表されるのであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
確実たしかに、自分には力がある。う丑松は考へるのであつた。しかし其力は内部なかへ/\と閉塞とぢふさがつて了つて、いて出て行く道が解らない。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこでお前さんが正直に今度の事情をわしに話したら、あるいはこのわしがその人を、救い出すことが出来るかも知れない。もちろん確実たしかとはいわれないがな
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
声を聞いたより形を見れば、なお確実たしかに、飛石を這ってうめいていたのは、苦虫の仁右衛門であった。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すべてのものが暮れ足の早い蔭影に呑まれて行くのに、独りこの骸骨だけは、徐々と、確実たしかに生命を喚びかえして、る看る肉が付いていくようであった。歯のところに、唇がかぶさった。
誰? (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
取り分け職人仲間の中でも世才に疎く心好き吾夫うちのひと、腕は源太親方さへ去年いろ/\世話して下されしをりに、立派なものぢやと賞められし程確実たしかなれど、寛濶おうやう気質きだて故に仕事も取りはぐり勝で
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
……いずれにしても白鷹氏と姫草ユリ子とが全然、無関係でない事は確実たしかだ。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
宮本夫人! ああそうだ、宮本夫人だ、確実たしかにそうだ。と思うと同時にこんどは男の顔も思い出せた。小田切大使! 思わず声を立てようとした。と、柔かい夫人の手が、つと私の唇を押えた。
情鬼 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
紛々たる人のうわさは滅多にあてにならざか児手柏このでがしわ上露うわつゆよりももろいものと旁付かたづけて置いて、さて正味の確実たしかなところを掻摘かいつまんでしるせば、うまれ東京とうけいで、水道の水臭い士族の一人かたわれだと履歴書を見た者のはな
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あきれたねえ、これには。』と町会議員も顔をしかめて、『もつとも、種々いろ/\な人の口からつたはり伝つた話で、誰が言出したんだかく解らない。しかし保証するとまで言ふ人が有るから確実たしかだ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
誰でも自分の頭が一番、確実たしかだと信じているんだからね。その方が結局、無事でいいし、お蔭で話の筋道もステキに面白くなって来る訳だから、そう慌てて結論を付ける必要もないだろうよ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
取り分け職人仲間の中でも世才にうとく心好き吾夫うちのひと、腕は源太親方さえ去年いろいろ世話して下されしおりに、立派なものじゃとめられしほど確実たしかなれど、寛濶おうよう気質きだてゆえに仕事も取りはぐりがちで
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
踏む度にさく/\と音のする雪の上は、確実たしかに自分の世界のやうに思はれて来た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)