真裸体まっぱだか)” の例文
その内に真裸体まっぱだかの赤ん坊が、糸の無い月琴を弾きめると、皆一時にピタリと踊りをめて、手に手に持っている道具を藍丸王に渡した。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「いますよ。よく見えないけれど、何だか裸体はだかの女のようですぜ。アア、真裸体まっぱだかです。それでこんなに暗くしてあるんですよ」
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
西、両国りょうごく、東、小柳こやなぎと呼ぶ呼出しやっこから行司ぎょうじまでを皆一人で勤め、それから西東の相撲の手を代り代りに使い分け、はて真裸体まっぱだかのままでズドンとどろの上にころがる。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
れから大阪はあったかい処だから冬は難渋な事はないが、夏は真実の裸体はだかふんどし襦袢じゅばんも何もない真裸体まっぱだか
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
真裸体まっぱだかの禰宜様宮田が、着物の明いているところじゅうから水が入って、ブクブクとまるで水袋のようになっている若い男を、やっとのことで傍の乾いた草の上まで引きずり上げたところであった。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「しかも、あいつは真裸体まっぱだかで逃げ出さなければならなかったのだ。なぜと云って、着ていた服もシャツも、皆、案山子の芯に使ってしまったのだからね」
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そしてその右には赤ぶくれに肥った真裸体まっぱだかの赤ん坊が座って、糸も何も張って無い古月琴げっきんを一挺抱えて弾いていた。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
流石さすがの乱暴書生もれには辟易へきえきしてとても居られない。夕方湯屋ゆやに行くと着物が臭くって犬が吠えると云うけ。仮令たと真裸体まっぱだかやっても身体からだが臭いといって人にいやがられる。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
夕方になると竹垣に朝顔のからんだ勝手口で行水ぎょうずいをつかったのちそのまま真裸体まっぱだかで晩酌を傾けやっとの事ぜんを離れると、夏の黄昏たそがれも家々で蚊遣かやりけむりと共にいつか夜となり
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
鍛冶屋のお爺さんは不意に門口かどぐちから笑うものが居るので吃驚びっくりして顔をあげて見ますと、髪毛と髭を蓬々とさした真裸体まっぱだかの男が鞄を一つ下げて立っておりますので
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
至極しごく元気のい活溌な男で、この松岡の云うに、僕が見事にの女共を物干から逐払おいはらって見せようと云いながら、真裸体まっぱだかで一人ツカ/\と物干に出て行き、お松どんお竹どん
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
六郎氏は何故真裸体まっぱだかになっていたのか、又変な鬘などを冠っていたのか、若しそれも春泥の仕業であったとすれば、彼は何故その様な途方もない真似をしなければならなかったのか。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
後や横を向いた時には真裸体まっぱだかのように見えることがある。
裸体談義 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そのあとから無茶先生が真裸体まっぱだかで走りますので、往来を通っている人はみんなビックリしました。
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
そこには、二本の脚に続いて、娘の胴体が、多分真裸体まっぱだかの胴体が、ある筈であった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかも殺されたものは当の六郎氏であったばかりでなく、彼は何故にあの奇妙な鬘を冠り、真裸体まっぱだかになって、吾妻橋下に漂っていたのであるか。彼の背中の突傷は何者の仕業であったのか。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)