真偽しんぎ)” の例文
旧字:眞僞
「わたしはユッセルへ、おまえの話の真偽しんぎたしかめさせにやる」とかれは言った。「幸いそれが真実しんじつなら、あしたは放免してやる」
と、銀銭若干じゃっかんを二人の百姓に与えて帰したが、にわかに、あわてるふうもない。——いや、まだその真偽しんぎを疑っていたのである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
事の真偽しんぎは知らぬが、明治の初年ごろに西郷さいごうはじめ維新の豪傑連ごうけつれんがはじめて御陪食ごばいしょく仰付おおせつけられたことがあったという。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さては、こけ猿の壺の真偽しんぎ鑑定役に、はるばる伊賀いがの柳生の庄から引っぱり出されてきた奇跡的老齢者、あのお茶師の一風宗匠、この二人をはじめ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その女人にょにんを奪って行ったというのは——真偽しんぎはしばらく問わないにもしろ、女人自身のいう所に過ぎない。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その真偽しんぎはとにかく、彼女からこういううぶな態度を見たいためにも、若い女たちはしばしば訊いた。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その、新聞社にてた手紙と葉書は、真偽しんぎ両説、当時大問題をかもしたもので、葉書のほうは、明らかに人血をもってしたため、しかも、血の指紋がべたべた押してあった。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
それから真偽しんぎの鑑定のために、虫眼鏡むしめがねなどをはさない所は、誠吾も代助も同じ事であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
化物探険隊の先登せんとうに立って、真偽しんぎたしかめたが、上と下とのスウィッチが、どっちもいているのに、クレーンが、轟々ごうごうと動いたというので、これはいよいよ、怨霊おんりょう仕業しわざということにまった。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
はたしてしからばこれ正邪の問題でなく、真偽しんぎの問題である。道徳の問題でなく、歴史上の問題である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
善くか、悪くかは、場合場合でちがふがね。え、いつはりまことに代へるおそれがある? 冗談じようだん云つちやあいけない。甲が乙に対して持つてゐる考へに、真偽しんぎの別なんぞ、あり得ないぢやあないか。
創作 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
真偽しんぎのほどは分らないが、生兵法なまびょうほうの秀忠が、夜ごと、城外へ出て、黒衣覆面し、無辜むこの往来人を辻斬して、ひそかに楽しむというのを聞き、忠明が、わざと彼の徘徊はいかいする濠端に夜行し
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葉書の真偽しんぎを鑑定することは容易だったのである。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
(註五)「」はこのあいだに伝吉の枡屋の娘を誘拐ゆうかいしたり、長窪ながくぼ本陣ほんじん何某へ強請ゆすりに行ったりしたことを伝えている。これも他の諸書に載せてないのを見れば、軽々けいけい真偽しんぎを決することは出来ない。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)