眞底しんそこ)” の例文
新字:真底
「うん」と、横へ向いてはづしながら、「死ぬのは、いつでも死ねるよ。おれなどア、どうして生きて行くかが眞底しんそこからの問題だ。」
全體ぜんたいつき何々なに/\といふふうに、かしらいてゐるために、幾分いくぶんうた上調子うはちようしになつてゐるが、眞底しんそこにはやはりよいものがあります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
あにはたゞ手前勝手てまへがつてをとこで、ひまがあればぶら/\して細君さいくんあそんでばかりゐて、一向いつかうたよりにもちからにもなつてれない、眞底しんそこ情合じやうあひうすひとぐらゐかんがへてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼れの心は眞底しんそこから哀愁に搖り動かされ、自暴自棄にさいなみ苦しめられた。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
自分が及ばずながら將來の國民音樂を起さうとする過渡時代の犧牲にならうと云ふ其の覺悟を眞底しんそこから了解し同情して呉れる日本人は、誤れる方向に指導せられやうとして居る現代に於て
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
「樺太郵便の不着が多いのは實に困る」と、義雄は眞底しんそこから不平さうに云つたが、その不平の最も深い意味は、無論、他の二友には分らなかつたのである。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
最後さいごうたは、よくなかひとつくりそうな道徳的どうとくてきうたですが、このひと眞底しんそこから、さうかんがへてゐたゝめに、ひとからたのまれてつくつたといふようないたところをせてゐません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)