盆石ぼんせき)” の例文
雲が手の届きそうな低い所にあって、見渡すと、東京中の屋根がごみみたいに、ゴチャゴチャしていて、品川しながわ御台場おだいばが、盆石ぼんせきの様に見えて居ります。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
雲飛うんぴといふ人は盆石ぼんせきを非常に愛翫あいぐわんした奇人きじんで、人々から石狂者いしきちがひと言はれて居たが、人が何と言はうと一さい頓着とんぢやくせず、めづらしい石の搜索さうさくにのみ日を送つて居た。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
盆石ぼんせき香会こうかい、いや忙しいぞ」「しゃくやくの根分けもせずばならず」「喘息ぜんそくの手当もせずばならず」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは全く庭園の境地であり、園芸植物の宝庫であるといえる。かくて熔岩の一ツ一ツは実に見事なる巨大の盆石ぼんせきで、三十町の熔岩流は実にまた驚くべき一大盆景なのである。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
さて眺望みわたせば越後はさら也、浅間あさまけふりをはじめ、信濃の連山みな眼下がんか波濤はたうす。千隈ちくま川は白き糸をひき、佐渡は青き盆石ぼんせきをおく。能登の洲崎すさき蛾眉がびをなし、越前の遠山は青黛せいたいをのこせり。
雲飛は所謂いはゆ掌中しやうちゆうたまうばはれ殆どなうとまでした、諸所しよ/\に人をしてさがさしたが踪跡ゆきがたまるしれない、其中二三年ち或日途中とちゆうでふと盆石ぼんせきを賣て居る者に出遇であつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さて眺望みわたせば越後はさら也、浅間あさまけふりをはじめ、信濃の連山みな眼下がんか波濤はたうす。千隈ちくま川は白き糸をひき、佐渡は青き盆石ぼんせきをおく。能登の洲崎すさき蛾眉がびをなし、越前の遠山は青黛せいたいをのこせり。
けだし芭蕉の盆石ぼんせきが孔夫子の泰山たいさんに似たるをいふなり。芭蕉かつて駔儈そくわいふう軽薄けいはくしふ少しもなかりしは吟咏ぎんえい文章ぶんしやうにてもしらる。此翁は其角がいひしごとく人の推慕すゐぼする事今に於も不可思議ふかしぎ奇人きじんなり。
けだし芭蕉の盆石ぼんせきが孔夫子の泰山たいさんに似たるをいふなり。芭蕉かつて駔儈そくわいふう軽薄けいはくしふ少しもなかりしは吟咏ぎんえい文章ぶんしやうにてもしらる。此翁は其角がいひしごとく人の推慕すゐぼする事今に於も不可思議ふかしぎ奇人きじんなり。