盆地ぼんち)” の例文
旭川平原をずっとちぢめた様な天塩川の盆地ぼんちに、一握ひとにぎりの人家を落した新開町。停車場前から、大通りをかぎの手に折れて、木羽葺が何百か並んで居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ここはわけて底冷えするという蹴上けあげ盆地ぼんちにある南禅寺の一房を出て、山門から駒に乗ってゆくいと痩せたる若い一処士にも似たる風采ふうさいの人があった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいえ、ありませんです。ここはずッと盆地ぼんちのようにたいらになっていて、青い草が生えていたばかりですよ」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
甲州は海を有たない山国で、甲府はその盆地ぼんちに位する都であります。町を歩いて店をのぞきますと、他の国には見かけないものが二つあります。一つは水晶細工すいしょうざいくで一つは「印伝いんでん」であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
遠野とおの盆地ぼんちは まっくらで
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そこには山を切り開いて盆地ぼんちが作られ、そこに巨大なる大理石材だいりせきざいを使って建てた大宮殿だいきゅうでんがあったが、今から二千年ほど前に戦火に焼かれ、砕かれ、そのあとに永い星霜せいそうが流れ
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
人の知らぬ小太郎山こたろうざんの峡をぬけて、おくへ奥へと二ほどはいった裏山うらやま、ちょうど、白姫しらひめみね神仙しんせんたけとの三ざんにいだかれた谷間たにまで、その渓流にそった盆地ぼんちの一かくそま猟師りょうし
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに立てば、ひるは東の真正面まっしょうめん富士ふじ銀影ぎんえい裾野すその樹海じゅかいがひと目にながめられ、西には信濃しなのの山々、北には甲斐かい盆地ぼんち笛吹川ふえふきがわのうねり、村、町、城下じょうか地点ちてんまでかぞえられる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天正てんしょう十年の春も早くから、木曾口きそぐち信濃口しなのぐち駿河口するがぐちの八ぽうから、甲斐かい盆地ぼんちへさかおとしに攻めこんだ織田おだ徳川とくがわ連合軍れんごうぐんは、野火のびのようないきおいで、武田勝頼たけだかつより父子、典厩信豊てんきゅうのぶとよ、その他の一族を
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)