白木屋しろきや)” の例文
髭に続いてちがいのあるのは服飾みなり白木屋しろきや仕込みの黒物くろいものずくめには仏蘭西フランス皮のくつ配偶めおとはありうち、これを召す方様かたさまの鼻毛は延びて蜻蛉とんぼをもるべしという。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
白木屋しろきやの火事の時に、屋上が焼け落ちるかもしれないと言っておどかす途方もない与太郎があったそうであるが、鉄筋コンクリートの岩山は火には決して焼けくずれない。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
お照は約束たがえず翌日あくるひの晩、表通おもてどおりの酒屋の小僧に四合壜しごうびん銀釜正宗ぎんがままさむねを持たせ、自身は銀座の甘栗あまぐり一包を白木屋しろきや記号しるしのついた風呂敷ふろしきに包んで、再び兼太郎をたずねて来た。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
... 洋服も寸法を見計らって大丸だいまるへ注文してくれ……」「近頃は大丸でも洋服を仕立てるのかい」「なあに、先生、白木屋しろきやと間違えたんだあね」「寸法を見計ってくれたって無理じゃないか」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日本橋に千代田橋と云うのがあります。白木屋しろきやのそばで繁華な街でした。
文学的自叙伝 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
みの「だから白木屋しろきやこまというのを汁粉屋赤飯しるこやおこわさ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三越みつこし白木屋しろきや売出うりだしと聞いて
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
白木屋しろきやで七階食堂の西向きの窓から大手町おおてまちのほうをながめた朝の景色も珍しい。水平に一線を画した高架線路の上を省線電車が走り、時に機関車がまっ白な蒸気を吐いて通る。
Liber Studiorum (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
九月の朔日ついたちに地震の起った時、重吉は会社の客を案内して下目黒しもめぐろの分譲地を歩き回っていた最中さいちゅうだったので何の事もなかったが、種子は白木屋しろきやで買物をしていたので、狼狽うろたえて外へ逃出し
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わたしは三越みつこし白木屋しろきやの中の
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
白木屋しろきやのへんから日本橋を渡って行く間によく広重ひろしげの「江戸百景」を思い出す。あの絵で見ると白木屋の隣に東橋庵とうきょうあんという蕎麦屋そばやがある。今は白木屋の階上で蕎麦が食われる。
丸善と三越 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
白木屋しろきや百貨店の横手に降りると、燈火の明るさと年の暮の雑沓ざっとうと、ラディオの軍歌とが一団になって、今日の半日も夜になるまで、人跡じんせきの絶えた枯蘆かれあしの岸ばかりさまよっていたわたくしの眼には
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
旧臘きゅうろう押し詰まっての白木屋しろきやの火事は日本の火災史にちょっと類例のない新記録を残した。犠牲は大きかったがこの災厄さいやくが東京市民に与えた教訓もまたはなはだ貴重なものである。
火事教育 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ひる過ぎから帰るつもりでいたが案外気分がいいし天気もいいから白木屋しろきやの俳画展覧会を見に行ったらもうすんでいた。それから丸善へ行って二冊ばかり教室へ届けさせるようにした。
病中記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
白木屋しろきやに絵の展覧会でもあるとはいって見る事もあるが、大概はすぐに丸善へ行く。
丸善と三越 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
白木屋しろきや七階食堂で、天ぷらの昼飯を食っていた。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)