発心ほつしん)” の例文
旧字:發心
趙州でうしう和尚といふ有名な唐の坊さんは、趙州古仏晩年発心ほつしんと人にはれただけあつて、六十一になつてから初めて道にこゝろざした奇特きどくな心懸の人である。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
やがては墨染すみぞめにかへぬべきそでの色、発心ほつしんは腹からか、坊は親ゆづりの勉強ものあり、性来せいらいをとなしきを友達いぶせく思ひて、さまざまの悪戯いたづらをしかけ
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
老いたる尼 あの法師は御存知の通り、殺生好せつしやうずきな悪人でしたが、よく発心ほつしんしたものですね。
往生絵巻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なんと斯発心ほつしんの歴史はあぢはひのある話ではないか。世の多くの学者が答へることの出来ない、其難問に答へ得るものは、信心あるものより外に無い。斯う住職は説き進んだのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あまり他愛たあいなさに、効無かひな殺生せつしやうやめにしやう、と発心ほつしんをしたばん、これが思切おもひきりのあみくと、一面いちめんじやうぬまみづひるがへして、大四手おほよつで張裂はりさけるばかりたてつて、ざつと両隅りやうすみからたかほしそらかげして
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かのこん屋七兵衛は此㕝より発心ほつしんしてのち出家しゆつけしけるとぞ。
何で乳くさい子供の顔見て発心ほつしんが出来ませう、遊んで遊んで遊び抜いて、んで呑んで呑み尽して、家も稼業かげふもそつちけにはし一本もたぬやうに成つたは一昨々年さきおととし
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)