わず)” の例文
こんなバラックでわずらっては、さぞ心細かったことだろう。可哀そうに。……お前も体を気を付けなよ。え、不養生をしちゃ駄目だぜ。
或る別れ (新字新仮名) / 北尾亀男(著)
二人とも日常ひごろ非常に壮健じょうぶなので——わずらっても須磨子が頑健がんけんだと、驚いているといっていたという、看病人の抱月氏の方がはかばかしくないようだった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
『そなたは、この夏の初め、わずろうていると風の便りに聞いたが、もうよいのか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中年ちゅうねんから風眼ふうがんわずらッて、つぶれたんだそうだが、別に貧乏というほどでもないのに、舟をがんとめしうまくないという変物へんぶつで、疲曳よぼよぼ盲目めくらながら、つまり洒落しゃれ半分にわたしをやッていたのさ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そんなこんなのうちに、見舞われたものが、見舞わなければならない羽目になったのは、あわれ米国アメリカ青年が、恋わずらいのブラブラやまいになってしまったのだ。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
疱瘡ほうそうわずらっているとき、あんまり許嫁いいなずけの息子とその母親が、顔を気にして見舞いに来るので、ある日、赤木綿の着物に、赤木綿の手拭で鉢まきをし熱にうかされたふりをして
今三十分二十五分と時計打眺めながら引止められしことまして我ためにとて雑誌の創立に及ばれしことなどいへば更なり、久しうわずらひ給ひその後まだよわよわと悩ましげながら
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そのおうち近江源氏佐々木おうみげんじささき家と共に、奥州へ下向げこうされたという古い家柄で、代々阪上田村麿さかのうえたむらまろ将軍の旧跡地きゅうせきちに、郷神社さとじんじゃの神官をしていらっしゃるとかで、当主より幾代か前の時、長くわずらって
糸繰沼 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)