くたび)” の例文
そしてがっかりくたびれたあしりながら竹早町から同心町の界隈かいわいをあてどもなくうろうろ駆けまわってまた喜久井町に戻って来た。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
とく國府津こふづどまりはこが三四りやう連結れんけつしてあるので紅帽あかばう注意ちゆういさいはひにそれにむとはたして同乘者どうじようしや老人夫婦らうじんふうふきりですこぶすいた、くたびれたのと
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
女房子供のお供を仰付おおせつかり折角の安息日を骨折損にくたびれて、一日の奉仕を終り、例に依って僕愛用の青バスに、僕の一小隊を乗せて万世橋へと向った。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
彼は待ちくたびれて女の往っている学校の傍を二時ごろから三時比にかけて暑いの中を歩いてみたが、その学校から数多たくさんの女が出て来てもあの女の姿は見えなかった。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
今度は如何にも大業おほげふに、「あゝ暑い、冷い水が欲しい。帶なんぞ取つちまふわ。」亂次だらしない姿になつて、「ほんとにくたびれてよ。雨が降るのに車屋がゐないんですもの。」
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
千世子はこんな事を云った後であんまり長く話してくたびれた様に深い溜息をいた。
千世子(三) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「なあに日曜にはくたびれることなんかないわ、」とファヴォリットは言った、「日曜には疲れもお休みだわ。」そして三時ごろに、楽しみに夢中になってる四組みの男女は、ロシアの山をかけおりた。
「何か食べましょうか。私くたびれちゃったから。」
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
元の処へ帰って来たのにくたびれる
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
伊沢はその中敷に腰を掛けて、ちょっとした歩行にもくたびれる足のくたびれを治していた。
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
夜道に歩きくたびれた私の肉体からだを浸すようにそこらにもっていた。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「そうね。もうあなたくたびれて?」
掠奪せられたる男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)