甚兵衛じんべえ)” の例文
旧字:甚兵衞
それから毎日、昼間ひるま甚兵衛じんべえがでかけ、よるになるとさるがでかけて、人形の行方ゆくえさがしました。けれどなかなか見つかりませんでした。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そのあとで、また蓄音機が一くさりすむと、貞水の講談「かちかち甚兵衛じんべえ」がはじまった。にぎやかな笑い顔が、そこここに起る。
水の三日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ひけらかして生きなければならなくなったのよ、その年の十一月、あたしは東両国の甚兵衛じんべえという、小さなお茶屋へかよい奉公にはいったんです
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たいでもまぐろでも、漁師の家にあるものを全部を買って来い。ついでに甚兵衛じんべえのところへ寄って、このサントリイウイスキイがまだ残っていたら、もう一升ゆずってもらって来い。
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その時の御先立おさきだちには、山村甚兵衛じんべえ馬場ばば半左衛門はんざえもん千村ちむら平右衛門へいえもんなどの諸士を数える。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だまされたという人は大抵たいていお酒にったり、臆病おくびょうでくるくるしたりした人です。面白いですよ。甚兵衛じんべえさんがこの前、月夜の晩私たちのおうちの前にすわって一晩じょうるりをやりましたよ。
雪渡り (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「酒屋の甚兵衛じんべえめにござります」
そう言って甚兵衛じんべえは、仲間の馬方うまかたや村の人達の間をたずね廻りましたが、誰一人としてそんなことを知ってる者はいませんでした。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
関守は小橋甚兵衛じんべえという与力で、これと問答しているのは、次高来太であった。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一方は傾斜の急な山林にり、一方は木曾川の断崖だんがいに臨んだ位置にある。山村甚兵衛じんべえ代理格の奉行ぶぎょう、加番の給人らが四人も調べ所の正面に控えて、そのそばには足軽が二人ずつ詰めていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
甚兵衛じんべえは、もうだれたのんでも人形を使いませんでした。そして山からときどきあそびにくるさる相手あいてに、たのしく一しょうおくりましたそうです。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
この際、木曾福島からの見分奉行けんぶんぶぎょうの出張を求め、場合によっては尾州代官山村甚兵衛じんべえ氏をわずらわし、木曾谷中の不作を名古屋へ訴え、すくなくも御年貢上納の半減をきき入れてもらいたいと考えた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ある田舎いなかの山里に、甚兵衛じんべえという馬方うまかたがいました。いたってのんき者で、お金がある間はぶらぶら遊んでいまして、お金がなくなると働きます。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「馬が承知のようだから、宿を貸してあげよう。そのかわりに約束を守って、二月の末までだぞ」と甚兵衛じんべえは言いました。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
貴様きさまどもはわるやつだ。甚兵衛じんべえさんの生人形いきにんぎょうぬすんだろう。あれをすぐここにだせ、だせばいのちたすけてやる。ださなければ八裂やつざきにしてしまうぞ」
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)