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猶豫
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たゆた
自然の
意志は
只管に
地上の
到る
處に
軟かな
青い
葉を
以て
掩ひ
隱さうとのみ
力を
注いで
居るのである。
其の
意志に
逆らうて
猶豫うて
居るのは
百姓の
手で
丁寧に
捏ねられた
水田のみである。
田圃の
榛の
木は
疾に
花を
捨てゝ
自分が
先に
嫩葉の
姿に
成つて
見せる。
黄色味を
含んだ
嫩葉が
爽かで
且つ
朗かな
朝日を
浴びて
快い
光を
保ちながら
蒼い
空の
下に、まだ
猶豫うて
居る
周圍の
林を
見る。