ひき)” の例文
「さ、そいでぁ、まんつ、」その人はひきづなを持ってあるき出し鈴はツァリンツァリンと鳴り馬は首を垂れてゆっくりあるきました。
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かくあるべきもの、かくあり度いものとして彼方に予想する女性の生活は、遙に今日実際在るその物よりも自分の心をひきつけた。
概念と心其もの (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
さて我山中に入り場所ばしよよきを見立みたて、木のえだ藤蔓ふぢつるを以てかり小屋こやを作りこれを居所ゐどころとなし、おの/\犬をひき四方にわかれて熊をうかゞふ。
その駱駝ひきに大層重そうであるが何が入って居るのかと尋ねますと「何だか知りません。大方銀塊でもありましょう。」「どこから来たのか。」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
東京には、こういう娘がひとりで蹣跚まんさんの気持ちをひきいつつ慰み歩く場所はそう多くなかった。大川端にはアーク燈がきらめき、涼み客の往来は絶ゆる間もない。
蝙蝠 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それから間もなく女学生が紅い袴を穿き、ついで蝦茶えびちゃの袴がある期間流行して、どのくらい青年の心をひきつけたか知れぬが、そのころはまだそれが、なかった。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それらのあらゆるものに増して、クララは人をひきつける魅力と、才能と、純粋性を持っていたのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
時々帳場格子のなかに坐っている良人おっとの顔を眺めたり、独り居るときに、そんな思いを胸にはぐくみ温めていたりして、自分の心が次第に良人の方へひきつけられてゆくのを
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
畫工の來るや、古の水道のなごりなる、寂しき櫛形迫持せりもちを寫し、羊の群をひきゐたる牧者を寫し、さてその前に枯れたるあざみを寫すのみ。歸りてこれを人に示せば、看るもの皆めでくつがへるなるべし。
しろがねの荷おえる馬をひきたてて御貢みつぎつかふる御世のみさかえ
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
一生懸命、そむける眼が、ツイお今のむごたらしい死骸にひき付けられる樣子です。